考える力

2017年10月 3日

「ほめると伸びる」は正しくない!? 子どもが自ら工夫や挑戦をし始める自信の育て方

■どのポイントをほめるべきなのか

 
大儀見さんは、具体的なほめるポイントを次のように説明します。
 
「アメリカのスポーツ心理学者であり、イリノイ大学で教鞭をとられたレイナー・マートンという方がいます。彼が研究の中で、どのポイントをほめたらいいかを明らかにしています。過程、努力、小さな進歩、そして社会的なスキルが身に付いたときにほめる。新しい技術を習得したときもそうでしょう。過去の努力が続いていることも、ほめていいポイントですね」
 
ほめるポイントを明確にしたうえで、大儀見さんは「自信を持たせる」という今回のテーマについての結論を述べました。
 
「最終的に自信を作るのは本人であり、自信を感じ取るのも本人。極論すれば、自信は持たせられるものではないのです。でも、指導者や保護者ができることはあります。それは気づきやヒントを与えることです。そうしたヒントを与えるなかで、子どもたちは努力やチャレンジをしていきます。大人たちはその姿を見て、こういうことができるようになったね、と褒めてあげたり、他にどういう考え方があるのかな、というフィードバックを与えるだけでいいのです。指導者はともかく、保護者は本来、サッカーについての余計な話はしないほうがいいのです」
 
結果ではなく、過程や努力に着眼点を置けば、見ている側の保護者にも余裕が生まれてきます。
 
「たとえミスをしても、微笑ましいと思えればいいですね。やっぱり、小さい子なりに考えているんですよ。例えば消極的にプレーしているように見えても、考えたうえでプレーしているんです。消極的だから怒るのではなく、どういう風に考えてプレーしていたの? って聞けばいい。その考えを聞き、別の選択肢のヒントを与えてあげる。そういうことを探りながら、イメージを膨らませてあげることが、なにより大事ことだと思います」
 

■親は聞き上手になろう

最後に大儀見さんは、自宅でできるメンタルトレーニングの方法を伝授してくれました。
 
「保護者の皆さんには、『ポジティブリフレーミングの達人になってください』と言っています。あらゆる事象をポジティブな方向に枠組み(フレーム)を変える、別の視点から見るということですね。たとえばコップの中に水が半分入っていたとして、『もう半分しかない』と捉えるのか『まだ半分もある』と捉えるかで感じ方が全然違いますよね」
 
「普段の生活から、上手くいかないことに対しても、こういう考え方があるかも、と前向きな方向へと持っていく。難しいことでも、それを楽しめるような状況へと導いてあげるんです。大切なのはチャレンジすること。仮説を立て、チャレンジの仕方を探らせてあげる。ちょっと先の未来をイメージさせてあげること。これがメンタルトレーニングにつながっていきます」
 
もうひとつ大事なことがあると、大儀見さんは言います。
 
「おそらく子どもは好きで、楽しくてサッカーを続けています。そのサッカーのことで、怒鳴ってしまったら終わりなんです。だから、基本的には聞き手に回ってください。人材を育てるリーダーシップの研究の中でも、話すよりも聞くスキルが大事だというのは分かっています。保護者の皆さん、ぜひ、聞き上手になってあげてください」
 
子どもが自分で課題に気づき、挑戦を繰り返しながら自信をつけていくためには、日々の生活の中で子どもの話をよく聞き、仮説を立てるためのヒントを与えてあげることが親としてできるサポートではないでしょうか。
 
大儀見浩介(おおぎみ・こうすけ)
株式会社メンタリスタ代表取締役。静岡県清水市生まれ。東海大学第一中学校(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に、全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将としてプレーした。東海大学進学後、高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、様々な分野でメンタルトレーニングを指導している。一橋大学サッカー部、京都大学サッカー部等、小学生からプロまでのメンタルトレーニングをサポート。NPO法人清水サッカー協会メンタルトレーニングアドバイザー。
 
メンタリスタ公式サイト>>
 

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