考える力
2017年10月10日
"今"ばかり見ない! つくばFCが実践する子どもが「サッカーばか」にならないための育成哲学とは?
■サッカーと勉強、両立のコツは…
つくばFCアカデミーでは、「サッカーも勉強も全力で努力する」を合言葉にしていますが、八木さんも森田さんも、サッカーと学業の両立ということは、日頃から意識しているようです。
「冬までサッカーをして、受験で目標を達成するには、その時間を使うしかなかったんです」。八木さんは大学受験を控えた高校3年生の当時、できるだけ長くサッカーを続けられるように、試合に向かうバス移動の中でも勉強していたという、驚きの逸話を明かしてくれました。「サッカーと勉強、どこまでできたら両立なのかは難しい部分ですし、両方の目標に到達するのは簡単ではないと思います。でも、絶対にできます。部活生よりも移動や練習などで多くの時間を要するクラブ生のほうが、時間の使い方を意識できるかもしれません」。
森田さんも同じように、サッカー以外の時間の使い方が大切だと言います。「準備、計画してやれば両立できると思います。クラブには遠くから通っている子もいますが、移動時間を工夫して使っている子もいます。そういう仲間の姿を見て真似する子もいますし、親だけではなく、コーチや友達の存在も大きいはずです」。
今回、「子どもがサッカーばかにならないために」というテーマでつくばFCを取材しましたが、石川慎之助代表や八木さん、森田さんの話を聞き、実際に子どもたちがプレーする姿を見る中で、それこそサッカーばかのように「サッカーに没頭できること」は、実は素晴らしいことなのではないかと考えさせられました。
「サッカーを頑張れているなら、今はできなくても、何かのきっかけで他のことも頑張れる力があると思います。そのきっかけを与えるのは指導者の役目の一つです。世の中には、頑張れるものを見つけられない子どももいます。だとすれば、ばかになるくらいサッカーを頑張れたら、それはすごいことなのかもしれません。サッカーを頑張って学んだこと、見たこと、聞いたこと、そのすべてがどのように変わっていくのか。頑張っている時間は決して無駄じゃない。その後の人生にどのようにつなげるのかが大切だと思います」
森田さんが話すように、サッカーに注ぐ情熱は、ふとした時、他のパワーを生み出すのかもしれません。
「サッカーだけをして、上を目指したいのであれば、『頑張れ』と応援します。でも同時に、到達できない可能性やサッカー以外のやりたいことに出会う可能性、プロ選手の引退後のことも伝えます。『だから、勉強も大事なんだよ』って(笑)」。八木さんもまた、打ち込めるものがあることの大切さを話していました。
「サッカーばか」とは果たして、どんな環境で、どんな仲間と、どんな指導者の下でプレーするかという、つまりは、「どんなクラブを選ぶのか」ということに尽きるのではないでしょうか。
取材の最後に、「僕は、挨拶には厳しいですよ」と森田さんが笑い、「僕は、勉強のやり方を教えられます」と八木さんがはにかむ。子どもを持つ親や子ども自身は、クラブを選べても、コーチを選ぶことは簡単にはできません。でもやはり、ブレることのない理念があり、子どもの将来のことを第一に願うクラブであれば、そのクラブの思いを背負って指導に携わるコーチ陣もまた、魅力的な人であふれていることでしょう。
子どもがサッカーばかにならないために──。皆さんは、どんなクラブを選びますか?
八木 大(やぎ・ひろし)
1991年12月5日生。茨城県出身。小学5年生からつくばFCのスクールに通い、ジュニアユース、ユースを経て東北大学へ進学。物理学の研究職と指導者の道で悩んだ末、コーチ業を選択。クラブに復帰し、現在はユースとセカンドチームの監督を務める。
森田大輔(もりた・だいすけ)
1992年5月10日生。茨城県出身。小学5年生からつくばFCのスクールに通い、ユースチームにも所属。日本工学院FCを経て、2014年にクラブに復帰。トップチームで選手を続けながら、現在は小学生年代のスクールのコーチを担当している。
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