考える力
2017年10月24日
元バルサの頭脳、シャビが一番大事にしている「最適なプレー選択」に必要な判断力の身につけさせ方
前回の記事では、バイエルンMF・キミッヒのプレーなどを例に挙げ、決断に至る思考プロセスについてお話ししました。
認知し、選択し、判断し、決断する。そうした認知能力が大事なのは間違いないのですが、だからといって「認知能力」だけを高めようとするのはどうでしょうか。
いろんな理論やメソッドが世の中にはあふれていますが、チュービンゲン大学スポーツ心理学オリバー・へーナー教授も、真新しいものに安直に飛びつくのではなく、ピッチ上でのサッカートレーニングが今後も重要であるということを改めて強調していました。
今回は、次のプレーを予測する力を育てるための手順についてお伝えします。(取材・文:中野吉之伴)
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■予測データベース構築のしかた
前回説明したように、様々な経験が頭と体に蓄積されることで次の展開を予測できるようになるためのベースを築くことができます。ただ経験を積み続けることは大切ですが、どのように積み重ねているのかという点を考慮するのが重要です。
一つの経験を一つの積み木として例えて考えてみましょう。外で得た"経験積み木"を子供部屋の中にバラバラで放り投げこんでほったらかしだったら、今度必要な時にそれをすぐ探し出すことができますか?
どのようにそれらを"積み重ねていく"か。そこが大切です。そのためには、それぞれに関連性を持たせることで、整理がしやすくなります。
「自分たちがボールを持っている」「自分はボールを持っていない」「フリーで受けられる動き出し」「相手選手が視線を話したときに動き出す」「背を向けてもらわないように半身の体勢をとる」
このように、キーワードをつなぎ合わせていくことで自分がすべきプレーが見えてくるようになります。とはいえ、難しく考えるすぎる必要はありません。
へーナーさんは一例として元バルセロナのシャビ・エルナンデスのコメントを紹介していました。
「バルセロナで最初に学んだことは『顔を上げてプレーする』。どこに次のDFがいて、いいパスを通すために何がベストのオプションかが見えてくるんだ。サッカーキャリアの中で様々なヒントをもらったが、今でもこれが一番大事なものだ」
「顔を上げて周りを見る」とは誰でも知っていることだと思いますが、だからこそ奥が深い。どこの、何を、いつ、どのようにみるのか。そして顔を上げてプレーできるようになるためには何を身につけ、どこに気をつけなければならないのか。何事もまずはシンプルさなアプローチ、そこから深く掘り下げていくことが大切です。
(顔を上げて周りを見ることが最適なプレーにつながる)