考える力
2018年8月 6日
いつでも話しやすい空気を作る。多くのJリーガーを輩出する滝川第二の松岡監督流、選手たちを伸ばす距離の取り方
■選手が言いやすい関係性を作ることで、積極性を引き出す
松岡監督が「黒田さんのやってきたことをブレずに今もやっている」と話すように、今も黒田元監督の教えはチームに受け継がれています。例えば、大会に入るメンバーを決めるのは選手投票というのは黒田さんの時代から続く滝川第二高校の伝統です。
(C)森田将義
また、指導の軸として今も据えられている「人の良い所を見る」ということも昔から変わらないポイントです。例えば、ジュニア年代だと足が速い選手が目立ちますが、松岡監督は「足が遅い子の方が、相手に負けないように予測して動いたり、考えながらプレーすると思う」と出来ないことではなく、出来ることに注目してあげています。
ただ伝統を守るだけではありません。「我々スタッフが言っていること全てが正しいわけではありません。選手の幅を広げるために良い物は採り入れなければいけないし、柔軟な発想で他がやっていないことを勇気を持って、どんどんチャレンジしないといけない」。そう話すように松岡監督になってからは新たな試みも積極的に取り入れています。その一つが選手との距離感でしょう。
選手の人間性を育むためには、選手を見ることと対話が大事と話す松岡監督は、あえて怒ってみたり、あえてぼけてみたりして、選手が話しやすい距離感を作るように心がけています。そうした関係性は、取材の際にも見られました。筆者が松岡監督の写真を撮っていると、「監督、かっこいい!」と冷やかす声が聞かれたり、リラックスした練習メニューの際には無邪気にはしゃぐ選手が多く見られました。「距離が開いてるように感じるから監督と呼ばれるのが嫌なんです。選手が右だと思っていても、指導者が左と言えば、右だと言えなくなる。だから、こちらが先に選手が言いやすい関係性を作らなければいけないと思っています」。
(C)森田将義
新しいことにチャレンジするのは指導者だけでなく、選手も同じです。選手には指導者に言われたことをだけをやるのではなく、自らが常に新しい物事にチャレンジするように求めており、そのためには何をすべきかを考えなければいけません。失敗を恐れず新しいチャレンジをする際には、先ほどのような監督に言いやすい関係性、押さえつけない関係が必ず活きてきます。こうした考え方は選手と指導者という関係性だけでなく、子どもと親の関係性を考える際のヒントになるかもしれません。
サカイクが運営している「サカイクキャンプ」では、ダメ出しはしません。一人ひとりに目を向け、サッカーの技術指導だけではなく、5年後、10年後学校や社会を自分の力で生きていくために必要な考える力や感謝する心、コミュニケーション能力を育む指導をしています。
指導者と選手が良い関係を築くことは、選手の成長にも大いに影響します。わが子を良い選手に育てたいなら、「今」の技術習得だけでなくお子さんの将来に目を向けてみてはいかがでしょうか。
<<前編:雄弁でなくてもリーダーシップは発揮できる! 岡崎慎司が滝川第二高校時代に見せた静かなキャプテンシー
松岡徹(まつおか・とおる)/滝川第二高校サッカー部監督
大阪府高槻市出身。滝川第二高で全国高校総体8強入りし東海大へ。高校サッカー選手権第70回大会には主将として出場。左サイドバックとして全国レベルの評価を得ており「ミスター滝川第二」と呼ばれていた。
1999年から恩師・黒田和生氏の下でコーチを始める。2007年からは栫裕保(かこい・ひろやす)前監督に仕え、2010年には全国高校選手権初制覇を経験。