考える力
2018年8月14日
「教科書には載ってない」情報こそが大事 恩師が語るベルギー名門で10番を背負った森岡亮太の成長の原動力
毎年たくさんのお子さんが参加する「サカイクキャンプ」では、サッカーの技術だけでなく人間性を高めるべく2017年の春キャンプから、ライフスキル研究者である慶應義塾大学の東海林祐子先生にアドバイザーを務めてもらい、「ライフスキル」プログラムを導入しました。
ライフスキルとは、人生の中で困難にぶつかっても自分で考えて乗り越えていける力のことであり、サカイクでは「考える力」「リーダーシップ」「感謝の心」「チャレンジ」「コミュニケーション」をサッカーを通して身につけられるライフスキルとしています。
優れたトップアスリートはスポーツの技能だけでなく、高い人間性も兼ね備えています。現在Jリーグや海外で活躍している選手たちも、学生時代からリーダーシップや感謝の心を身につけていたのでしょうか?
このコラムでは、『あの選手は高校時代にこんなスキル・人間力があったから成功した』と感じるエピソードをもとに、サッカーの技術だけでなく、人間的なスキルを磨くことの大切さに迫ります。(サカイク編集部)
今年、惜しくもワールドカップロシア大会のメンバー入りを逃がしましたが、テクニックの高さとアイデア溢れるプレーは日本でも屈指。ベルギーの名門、アンデルレヒトで10番として活躍するMF森岡亮太選手。今回は、高校3年間を過ごした久御山高校の松本悟監督から、森岡選手の人となりや知られざるエピソードをお聞きし、サッカーを通じて育まれるライフスキルについて考えます。(取材・文:森田将義)
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現在は海外でプレーしている森岡亮太選手(C)兼子愼一郎
■自分の将来像を描きながらサッカーにも勉強にも邁進
「初めて見た時、稀に見る賢い良い選手だなと思いました。クレバーだから、指導者が1から10までを言わなくてよい。教えなくても、相手と駆け引きが出来るから足が速くなくても中盤で相手を抜くことが出来る選手でした」。松本監督がそう振り返る森岡選手は、早くから類稀なサッカーセンスを発揮。入学前に参加した遠征では一人で大量得点を奪い、鮮烈な高校サッカーデビューを果たしました。
そして、入学してからその存在感はより大きくなっていきます。勝ち気な性格だったという村山拓哉選手(ポーランドやタイで活躍)ら先輩の存在も森岡選手の成長にとってプラスに働き、周囲の刺激を力に代えながら、1年目からチームに欠かせない選手として活躍しました。
いくら上手いからと言っても、先輩だらけの中で持ち味を発揮するのは至難の業ですが、松本監督が「自分が一番上手いと思っているような先輩たちばかりだったけど、森岡は俺が一番と上手いと思っていたと思う。実際、一番上手かったし、結果も出していた。3年生の中にパッと入っても活躍するだけの力量があったし、『コイツが入ってきたから、全国大会に行けるだろう』というチームに雰囲気があった」と懐かしむように、物おじしない性格や自分に対する自信も活躍のために欠かせない要素でした。
ピッチで活躍するための、努力を欠かさないのも森岡選手の特徴です。「主体的に考えて、自分が将来こうなるんだという将来像が描けていた」(松本監督)
森岡選手の場合、上手くなるため、プロになるためにはどうすれば良いかを常に考え、行動していました。栄養面に関しての意識も高く、中学の頃から身体に悪いという理由で脂肪の多い食事や炭酸飲料は一切口にしなかったそうです。
松本監督は「俺なんかは馬鹿にされてもおかしくないくらい食に対する意識が高かった。冬の寒い試合後に、『寒いだろ? カレーうどんでも食べるか』と声をかけたら、『いりません』と言ったのを覚えています。それくらいしっかりしていたから、高卒でプロに行けたと思います」と振り返ります。
勉強に対する意識も高く、普段から真面目に取り組んでいたため、一度も両親から勉強についての指摘を受けたことがなかったそうです。ヴィッセル神戸に入団してからも、早稲田大学の通信教育課程を6年かけて卒業。英語の勉強も熱心に行うなど、海外でプレーするための下地をしっかり作っていたことが今の活躍に繋がっているのです。