考える力
2019年6月28日
量より質。質を高めるキーワードは「ていねいな振り返り」
サッカーは早朝と夕方の涼しい時間にプレーし、日中の暑い時間は夏休みの自由研究課題など、勉強にまつわることをします。講師にしつもんメンタルトレーニングの藤代圭一さんを招き、サッカーだけでなく、勉強にも前向きに取り組む心を育むキャンプです。
藤代さんは「サッカーに前向きに取り組む子が、勉強の成績も上がることは、珍しいことではありません。関わらせてもらった子どもたちの多くが勉強面でも成果がでるんです」と言います。
「サッカーで目標を立てたり、振り返りをして自分の考えを発信し、周りの人に受け止めてもらうことを繰り返していると、自然とやる気が高まって、他のことにも伝染していきます。サッカーの練習前に『練習が終わった時にどうなっていたら最高だと思う?』というしつもんをするのですが、それを何度もしていると、サッカー以外の場面でも同様に考えるようになっていきます。たとえば『算数の授業が終わった時に、どうなっていたら最高だろう?』というように。このマインドで取り組んだおかげでやる気が出た、成績が上がったということはよくあります」
サッカーも勉強も、物事を習得するプロセスは同じです。過去を振り返り、なりたい最高の自分を設定し、そこに進んでいくために、何をすべきかを考えます。サッカーの場合、子ども達は興味があるので、「こうなりたい」というイメージを誰しもが持っています。その考えを、勉強にも応用させていくそうです。
量だけでなく質にも目を向けるのも、文武両道キャンプの特徴です。
「最近、スポーツの長時間練習について、議論されるようになりました。1時間という時間の長さは誰にでも平等ですが、質は平等ではありません。短い時間の中でも質を高めれば、上達することはできます。それは、今後スポーツに取り組む考え方として重要になるので、ぜひ子ども達にも体感してほしいです」
藤代さんは、質を高めるために大切なのは「振り返りをていねいにすること」だと言います。
「せっかく時間をかけてやったのに、そこで終わりではもったいので、振り返りをしっかりやります。練習や勉強で学んだこと、次に生かせることは何か。何を感じたかなど、感情や行動をていねいに振り返ると、経験が体験になり、次はこうしてみようという気持ちが芽生えてきます。長時間練習をすると、練習をこなすのに精一杯になり、振り返る時間もエネルギーも残りませんよね。振り返ることはとても重要なので、文武両道キャンプでは、その時間を大切にしたいと思っています」
振り返りをするときに有効なのが、ワークをすること。『文武両道キャンプ』では、練習や習の前後に、チームメイトと一緒に、対話(考えていることをシェア)をします。
「ワークやミーティングでありがちなのが、全員で輪になって、手を上げて発表をさせること。でも、全員の前だと言いづらいことってありますよね。とくに日本人は、人前で発言するのを避ける傾向にあります。そこで僕が取り入れているのが、2人1組のペアワークです。全員の前では発言できなくても、1対1になったら子ども達は必ず喋りはじめます。話をすることで考えが整理されますし、他の人の意見を聞くことで、自分の意見が確立されていきます」
練習や学習の質を高めるために、様々なワークが用意されている『文武両道キャンプ』。いろいろな角度から、子どもたちに刺激を与える工夫が施されています。
「文武両道キャンプでは、サッカーの目標設定と同じように、『将来、どんな自分になれたら最高か?』をイメージしてもらい、そこに近づくためにはどのような道をたどればいいかを考える時間をつくります。目標に道筋がつくと動き始めることができますし、やる気も出てきます。それが、進むべき道を示す地図になります」
地図がなければ、どの方向へ進めばいいかがわかりません。ましてや子どもが手探りで、進むべき道をみつけるのは至難の業と言えるでしょう。
「だからこそ、保護者は一緒になって地図を作ることをサポートしてあげてほしいのです。地図がなければ進むべき方向も、現在地もわかりません。そのつど、『右に行きなさい』「『左に行きなさい』と言っていたら、子どもは親がいなければ進めなくなってしまいますよね。夏休みの過ごし方も同じで、自由研究は文武両道キャンプの中で完成するようにはしていません。そこで、キャンプが終わって家に帰ったときに、どのような行動をとるか。それに対して親がどうサポートするかというところまでを、お伝えしたいと思っています」
藤代さんが講師として参加する『文武両道キャンプ』は、7月下旬に2泊3日の日程で行われます。キャンプ終了から夏休みの最後まで1ヶ月程度あるので、その間、どのような姿勢で過ごせばいいかまでをデザインできる内容になっています。
キャンプ中は、サッカーと勉強以外の時間は自由です。子どもたちで話し合い、何をするかを、決めることもあります。これはサカイクで提唱する『考える力』や『コミュニケーション』といったライフスキルを高めることにもつながります。