考える力

2022年1月 3日

今年は目標を叶える自分になる! 達成するための目標設定のコツ

新しい年がスタートしました。気持ちも新たに、新年の目標を立てたいと思うご家庭も多いのではないでしょうか。

ですが、「目標を立てるけれど、立てただけになってしまう」「ぼんやりとした目標しか立てられない」という子どもは多いものです。

そこで、スポーツメンタルコーチングの第一人者であり、数多くのアスリートをサポートしてきた柘植陽一郎さんに、サッカーをしている小学生向けの目標の立て方を伺いました。
(取材・文:小林博子)

※過去に配信した記事に加筆、修正して再度配信いたします

 

 

■実現可能な目標を立てるための4ステップ

子どもたちは「目標を立てる」と言われても何から始めたらいいかわからないというケースが大半。「サッカー選手になりたい」という夢はあるものの、それを叶えるために目標とするべきことは言語化できず、漠然とその夢だけを胸に抱いているという子どももいることでしょう。

我が子に夢があることはとても喜ばしいことですね。その夢は、できることなら叶えてもらいたいのも親心。そして、夢に向かって頑張れる子であってほしい気持ちもみんな同じはずです。子どもがなりたい自分に近づくための目標設定をこの新年にちゃんと行ってみませんか。

目標設定のためにやるべきことは、大きく分けると以下の4つだと柘植さんは教えてくれました。

<目標設定のためにやるべきこと>
①未来への道筋を目に見える形にし、今の自分が立つ地点を知る
②具体的にイメージしやすい数年後の自分の姿を言葉にする
③分解して具体化する
④スケジュールに落とし込む

 

■未来は今とつながっていることをビジュアル化する

柘植さんが行う講義では、子どもたちには体育館など広い場所に集まってもらい、まずは「今」と「将来」をつなげた1本の道をつくります。子どもたちは付箋と筆記用具を手に持ち、その道の上で起こりうることを思いつくままに貼っていきます。

長く続くスペースに1本の道に付箋が貼られた様子は、自分がこれから歩んでいく時間軸を表すのだと柘植さんは言います。その様子を自ら作り、ビジュアルとしてとらえることで「今は未来とつながっている」ことを実感するのだそうです。

当たり前のことのようですが、心や頭のなかでは人生が1本の道としてつながっていることはイメージしにくいものです。普段から目にしているカレンダーやスケジュール帳は、使い勝手がいいように時間軸を分断してあり、それを見慣れているだけに分断された時間軸の感覚がデフォルトになってしまいがちです。人生の各地点を点と点ではなく線にすることで、自分が立つ今もより鮮明になると柘植さんは言います。

「サッカー選手になるという夢があってもそこに至るまでの具体的なプロセスが語れないのは、今の延長線上に未来があるという感覚が得られていないからかもしれません。まずそこをつなげることで、途中過程のことも具体的に考えられるようになります」(柘植さん)

人生が一本の道としてつながっていることをイメージする(提供:一般社団法人フィールド・フロー)

 

ご家庭で行う場合はノートに付箋をはるという方法がおすすめだそうです。まずは時間軸の線を1本引き、付箋をぺたぺたと貼りましょう。「中学生でキャプテンになる」「高校サッカー選手権に出場する」といった、想像しやすい未来の姿があるはず。それをすべて貼ってみてください。

付箋に書く言葉が思いつかない小さな子どもの場合は、あり得ることを親御さんが書き出すという方法でも構わないそう。ただし、その付箋の中からどれを貼るかを決め、手を伸ばすのは子どもにしてもらいましょう。そしてノートに貼る時は、改めて自分自身で付箋に書き直すことを勧めています。「自分で選んで自分で決めたこと」であることが大切なのだそうです。

 

■イメージしやすい数年後の自分を言語化する

自分が今いる2022年が時間軸の中のどこなのかがイメージできたら、この1年を「月」「曜日」など細かく分解します。そうすることで、人生の中のどこにいるのかがさらにわかりやすくなるはず。その感覚がつかめたら、次のステップもスムーズに進められるはずです。

行うことは、遠くない未来の時点を決め、以下の3つを言語化することです。

・結果の目標
・パフォーマンスの目標
・目標を達成したときのストーリー

具体例として「高校3年生の自分」で3つを言語化してみましょう。

結果の目標:
高校サッカー選手権の決勝戦で9番のユニフォームを着て国立競技場のピッチに立つ。自分が決勝点を決めて、自分のチームが優勝する。

パフォーマンスの目標:
世代別日本代表に選ばれている選手とのマッチアップでも負けない体を武器に、チームの勝利に大きく貢献する。ドリブルで何人も突破してボールをゴールに運ぶテクニックがある。ここぞというシーンでしっかり点を決める

ストーリー:
自分のプレーで会場がどよめき、テレビや雑誌で注目選手として取り上げられる。かわいい彼女ができていて会場に応援にきてくれる。

いつまでにどうなっていたいのか、近い未来への目標を立てるときに意識する時間軸のイメージ(提供:一般社団法人フィールド・フロー)

 

ここでまず大切にしたいのは「設定時期」が具体的に見据えることができる近しい未来であること。たとえば「25歳で海外のビッククラブに在籍している」だと今の自分との距離がありすぎて、具体的なシーンが思い描きにくいからです。

目安としては、今小学生なら中学生のころを、中学生なら高校生のころと、1ステップ上がった未来がやりやすいでしょう。「リアルなわくわくするシーンをたくさん想像してください」と柘植さんは話します。

 

■パフォーマンスの目標を分解していく

最後に行うのは、2つ目に言語化した3つのうち、「パフォーマンスの目標」を分解することです。

例えば以下のように思考を掘り下げていくことだと柘植さんは教えてくれました。

 

・強い選手とのマッチアップでも負けない体とは、どんな体? そのためにはどんな努力が必要? 食事はどんなものをどれくらい食べたらいいのだろう?

・ドリブルで活躍するとはどういうこと? そのためにはどんな能力が必要? どんなことを知っておくべき?

・ここぞというシーンで点を決める決定力とは? 「ここぞというシーン」とはどんなシーン? そのために必要なのはテクニック? 強いメンタル? それとも......

パフォーマンス目標細分化のイメージ(提供:一般社団法人フィールド・フロー)

 

こうやってとにかく細かく、思いつく限り細分化しましょう。思考を次々に枝分かれさせてイラスト化する「マインドマップ」や、メジャーリーガーの大谷翔平選手が行ったことで知られる「マンダラチャート」形式がやりやすい人もいるでしょう。

どちらの方法でも中心に書くのは、2つ目で書いた「結果」「パフォーマンス」「ストーリー」をもとにした、わくわくする瞬間にするのだそうです。

最後に書き込むのは「点数」だそうです。細分化された目標は、達成された時を10点満点とすると、今の自分は何点かを考え、今と目標を明確に比較します。

今が6点だとしたら、今年の終わりには7点、来年は8点......と少しずつ点数を上げていくためにできることはどんなことかも考えやすくなり、より現実味が帯びてくるのだそうです。

 

■スケジュールに落とし込む

ここまでできたら、あとは目標とする自分になるために言語化した行動をスケジュールに落とし込むだけ。学校の時間割のように1週間をバーチカルで俯瞰できる表を1枚の紙に書き、その中でサッカーに充てられる時間に書き込みます。

ちなみに、ここで書き込む日々の行動は、例えば「リフティングを〇回する」「こんなことを頑張る」「こんな気持ちで取り組む」など「量」と「質」をうまく組み合わせると良いそうです。


この方法で、目標が書かれた紙が4枚完成しました。具体的な目標設定ができると、その目標を達成するために頑張る気持ちになりやすいものです。

後編では立てた目標を実現するモチベーションを保つためのコツや、親のかかわり方のアドバイスをご紹介します。

 

柘植陽一郎(つげ・よういちろう)
一般社団法人フィールド・フロー代表 スポーツメンタルコーチ
専門はメンタル、コミュニケーション、チームビルディング。
2006年より本格的にアスリートのサポートを開始。メンタルスキル指導とは一線を画す「メンタルコーチング」を用いて、2008年北京五輪・2012年ロンドン五輪で金メダリストや指導者をサポート。2011年~2014年までソチ五輪で3つのメダルを獲得したスノーボードナショナルチームを、2016年リオ五輪で48年ぶりの4位入賞の女子体操では、コーチと選手をサポート。その他ラグビートップリーグチームやサッカー日本代表選手、プロ野球など、プロ・オリンピック代表から部活動まで様々な世代・競技を幅広くサポートする。日本と韓国にてスポーツメンタルコーチ養成講座を開講。
著書に「最強の選手・チームを育てるスポーツメンタルコーチング」(洋泉社)、「成長のための答えは、選手の中にある」(洋泉社)

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