考える力
2022年3月18日
サッカーでも大事な「自分で決める」能力が身につく、デジタルツールを使った教育でわが子の決断力を高める方法
GIGAスクール構想によるICT教育の浸透は、子どもたちの学習スタイルを大きく変化させました。前編ではICTの活用はサッカーにも必要とされる「主体性」を育みやすい側面があることをリクルートEd-tech総研所長の山下真司さんが解説してくれました。
ICT教育による効果をある程度理解すると、次に思うことは親である私たちがどう捉え、寄り添っていくべきかということかもしれません。
まず大切なことは「今までとは違う」というマインドセットを行うことだと山下さんは言います。それはどういうことなのでしょうか。ICT教育への親の向き合い方についてアドバイスをいただきました。
(取材・文:小林博子)
(写真は少年サッカーのイメージ)
<<前編:今話題の「ICT教育」はサッカー、勉強で主体的に学ぶ姿勢が身につく!? ICT教育のメリットとは
■使う時間も使い方も「自分で決める」こと
自宅で画面を見つめる時間が長くなった我が子の姿を見ると、「目が悪くなるのでは」と心配になる方は多いはず。
使っていい時間を決めるなどの対策を講じているご家庭も多いことでしょう。ですが、使う時間はひとまず子どもに決めさせてあげましょう。
前編でお伝えしたように、学校では今、子どもたちの学び方が大きく変化していて、「主体性のある学び」に重点がおかれています。ICTをツールとして活用することで、その学びがさらに加速すると考えられています。1人1台の端末、つまり子どもたちの学習のためのツールだからこそ、使う時間や使い方といったルールも主体性を尊重してあげるほうがベターだといいます。
もしかしたら「好きなだけ使う」と決める子もいるかもしれませんが、そこは少し我慢してください。なぜそう決めたのか、それについてどう思うのかを問い、否定せずに見守ってあげることが大切です。
■親が決めたことを守らせると、良くない結果が出た時に「ママ/パパのせいだ」と他責的に
子どもは次第に、自分自身で決めたことが自分に良い影響を及ぼしてくれたのかを振り返るときがくるはずです。
親にタブレットを使う時間を制限されていたらできないことです。自分の判断をもう一人の自分が客観的に評価できれば、自らの意志で改善に取り組むでしょう。これは「自己調整力」と言われるものであり、学習力に必要な「メタ認知」を強くしてくれます。このようなケースのように、絶対的な正解がないものに対しては、自分で考えて得られる「納得解」を見つけることが大切です。
なお、親が決めたことを守らせるスタイルにはもう1つの懸念があります。それは子どもが物事の結果を他責的に捉える習慣がつきやすくなってしまうこと。「宿題が終わらなかったのはママ/パパが決めた制限時間のせい」など、真摯に振り返ることができずに他者のせいにしてしまうかもしれません。
■検索は「知識の獲得」であり、思考を阻害するものではない
疑問や知りたいことがあるときに、手元にタブレットがあるとすぐに調べることができます。すぐに解答を得られるため、「自分で考える」ことが阻害されはしないかと心配になるという親御さんもいます。
それに対しては、「知識と思考は別」と心得るべきです。検索して得られるのは「知識」に過ぎません。
大事なのは子どもが持っている知識と得られた知識を組み合わせたり、「活用」したり、「なぜだろう」と考えるクセをつけることです。さらには検索で得られた情報が本当に正しいかどうかも考えることも大切です。
ここでの親御さんの役割は、「なぜ知りたいと思ったのか」「それは事実なのだろうか?」「その知識を得てどう思うか」といった問いをお子さんに投げかけてみてください。いわゆる「クリティカルシンキング(前提を疑う思考)」です。情報を鵜呑みにして終わるのではなく、まず「?」を持つこと。そして「?」だったものが「!」になる学習プロセスによって、より深い次元の学びを得られるのです。
■子どもではなく「親」が変わらなければならない
激動の変化に対し、親はどのように考え、どう接したらいいのでしょうか。学校からGIGAスクール構想やICT教育に関するパンフレットなどが配布されていますが、それを読むだけでは、親はどう捉えどう接していいのかわかりにくいという話をよく聞きます。自分が学生時代に経験していないことなのでなおさらですよね。
ご家庭では、子どもの自主的な学びの姿勢を信じて見守ることが今保護者に求められます。子どもが自ら考える姿勢を尊重してあげること。「私が子どもの頃とは全く違う」というマインドセットがとても大切になります。
■教員はTeach(教える)ではなく、Coach(導く)立場に変化
これからの教育において、学校での教師の立場は「ティーチ(teach)」ではなく「コーチ(coach)」「ファシリテート(facilitate)」に変化しています。リクルートが提供する『スタディサプリ』を活用いただいている学校でも、算数や国語、英語といったような積み上げ学習は『スタディサプリ』のようなICTツールでの学びで効率的におこない、先生たちは生徒と向き合う時間により時間をかけています。
教師が一方的に教えるのではなく、子どもたち同士で学び合い、一人一人の学びが深まるように導く授業づくりをするということです。子どもたちは「教えてもらう」ではなく「学び取る」という姿勢になります。学びのベクトルの向きが真逆に変わっていきます。
言うならば、子どもを取り巻く学習環境も、それを見守る親御さんのマインドも今は大きな過渡期。戸惑うのは当たり前です。自分たちが経験してきた授業スタイルとは異なるのですから。頭では理解していても心が追い付かないということもあるかもしれませんが、これからの社会を生きる子どもたちに必要な力をつけていくために必要だと捉えてみてはいかがでしょうか。
大事なのは学びの本質です。サッカーでも学校生活でも、社会人になっても大事な「主体性」を身につけるために、子どもの考える姿勢をサポートしてあげましょう。