考える力

2023年7月20日

【文武両道】宿題がない夏休みもコツコツ勉強するようにはどうすればいい? 「小学生の究極の自学ノート図鑑」著者の森川先生がアドバイス(後編)

もうすぐ夏休みがやってきます。夏休みは学校がないので、学習習慣が身についてない子は、勉強から距離をとりがち。保護者の立場としては、夏休みの終わりに課題を一気に片付けるよりも、毎日取り組む姿勢を身に付けてほしいもの。

では、お子さんに「自ら学習する姿勢」を身につけてもらうには、どうすればいいのでしょうか? この悩みを解決するためのヒントを関西学院初等部教諭の森川正樹先生にうかがいました。

『自学』を通じて、子どもたちの学ぶ力の向上に取り組む森川先生のアドバイス。

後編では「勉強を習慣づけるための方法」をお届けします。
(取材・文 鈴木智之)

 

 

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■勉強を「見える化」したり、イベントを作って親子で楽しむ

勉強を習慣づけるための方法について、森川先生は「見える化すること」と言います。

「一覧表を作り、たとえば自学をした日はそこにシールを貼ります。そうすることで、自分がどれだけやったかがひと目でわかりますよね。それを見た保護者が『これだけやって偉いね』と感心してあげることも大切です」

ほかに「イベントを作ること」も、習慣化するための良い方法だそうです。

「自学が3回できたら、お子さんが自学で使いたい本を保護者の方と一緒に買いに行くといったように、イベントを作って親子で面白がること。これは学習を継続する上で、効果があると思います」

 

■勉強したらゲームをしていい、では勉強が苦痛な作業になってしまう

反対に、やってはいけないのが「勉強を1時間したら、ゲームを1時間してもいい」といったような提案をすること。

森川先生は「このやり方だと、勉強をゲームと対極のものととらえてしまいます。『楽しいゲームをするために、苦痛な勉強をしなければいけない』という考え方だと、勉強が学びではなく、作業になってしまいます」と注意を呼びかけます。

「勉強も遊びもスポーツも同じカテゴリーにある『学び』で、対局にあるものではありません。遊びやスポーツからも、学べることはたくさんありますから」

 

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■コツコツ勉強する習慣を身に付けるために大事な事

保護者はお子さんに、毎日とは言わなくても「コツコツ勉強してほしい」と願うもの。森川先生は「勉強の適切な頻度は、お子さんによって違うので、見極めることが大事」と優しく語りかけます。

「まずは毎日ではなくても、2日に1回や3日に1回できるようになってきたら、だんだん毎日にするのもいいですね。適切な頻度はお子様によるので、それを見極めるのも大切です。勉強を毎日強いることが、モチベーションになる子はいいのですが、そうではない子もいますからね」

その上で、保護者が「毎日勉強してほしい!」と思うのであれば、進め方に工夫をすると良さそうです。

「たとえば好きな図鑑を、机の前に座って20分読むでもいいと思います。ほかには、月曜日は自学をやって、火曜日はその続きをやる。水曜日は好きな本を読む。木曜日は苦手な計算ドリルをやってみよう。金曜日は親と一緒に料理を作るといったように、親子でワクワクするようなプログラムを作ってみてはいかがでしょうか」

 

■学習の習慣をつけたい親がやりがちな失敗例

学習の継続を妨げる、やりがちな失敗として、次のような例をあげます。

「失敗しやすいのが、保護者がドリルを買ってきて『漢字が苦手なんだから、夜ご飯の前、毎日30分やりなさい』と、一方的に言ってやらせること。それをモチベーションにできる子はいいのですが、多くの子が『面倒くさいことがひとつ増えた』と感じてしまいます」

そうなると、勉強ではなく作業になり、苦痛をやり過ごすための時間になってしまいます。本来の目的である学びにはつながりません。

「それはなるべくやめて、親子で『作戦会議しよう』みたいにして、月曜日はこれ、火曜日をこれをやってみようと決めるのがおすすめです。そして2週間経ったら、作戦を練り直す時間を設けましょう。この曜日は他の習い事で時間がとれない、毎日だとしんどいので休憩も必要だねといった意見が出てくるので、「見直す時間」を持つといいと思います」

親から子へ、一方的に「これをしなさい」と与えるのではなく、互いに話し合って決める「親子の約束」にすると、勉強に対するモチベーションも上がりそうです。

「毎日やる習慣をつけるのであれば、現状を振り返って、定期的にフィードバックして改善していくこと。長い目で見ると、そのやり方が続きやすいのではないかと思います」

 

■保護者もそれなりの覚悟を持つこと

さらに森川先生は「勉強を毎日やらせたいのであれば、保護者もそれなりの覚悟を持つべき」とアドバイスを送ります。

「子どもを子ども扱いせず、『なぜ毎日勉強したほうがいいのか』を、論理的に説明することが大切です。『あなたのことを思って言っているよ』と口に出して、こういう理由で勉強が必要なんだと伝えてあげることですね」

『子どもを子ども扱いしないこと』は、勉強に限らず、サッカーや日常生活においても、心のどこかにとどめておくと良さそうです。

 

■スポーツやレジャーでの学びもある! 夏休みは普段できないことを経験するチャンス

いよいよ夏休みがやってきます。森川先生は来たる長期休暇に向けて、次のようなメッセージをくれました。

「夏休みは、普段できない経験をする絶好のチャンス。机の前に座ってする勉強以外にも、スポーツやレジャーから気づくこと、学ぶことはたくさんあります。せっかくの夏休みなので、お子さんに『考えさせる経験』をたくさんさせてみてはいかがでしょうか」

さらに、こう続けます。

「たとえば料理が失敗してしまった。昆虫を上手く捕まえられずに、逃げられてしまったといった、小さな失敗をすることも必要です。失敗は体験からしか生まれません。そこには必ずなぜ? という理由や学びがあるので、AIでは代替できない、体験の貯金をさせることは、すごく大切なのかなと思います」

夏休みは体験の貯金をするのにうってつけの時期。サッカーや勉強に加えて、様々な行事やイベントにチャレンジしてみましょう。

 


森川正樹(もりかわ まさき)
関西学院初等部教諭  
平成32年版学校図書国語教科書編集委員 
教師塾「あまから」代表 教師のためのセミナー「詳細辞典セミナー」講師
日本シェアリングネイチャー協会ネイチャーゲームリーダー、日本キャンプ協会キャンプディレクター、日本自然保護協会自然観察指導員、CEEプロジェクトワイルドエデュケーター

国語科の「書くこと指導」「言葉の指導」に力を注ぎ,「書きたくてたまらない子」を育てる実践が,朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞,日本教育新聞などで取り上げられる。県内外で「国語科」「学級経営」などの教員研修,校内研修の講師をつとめる。社会教育活動では,「ネイチャーゲーム講座」「昆虫採集講座」などの講師もつとめる。

★森川正樹の教師の笑顔向上ブログ
https://ameblo.jp/kyousiegao/

 

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