サカイクキャンプ

2014年3月14日

サカイクキャンプヘッドコーチ高峯弘樹インタビュー(後編)

サカイクキャンプの高峯ヘッドコーチ、武田キーパーコーチ(※千葉キャンプのみ帯同)がいかなる人物なのか、その経歴と指導の考え方に迫るインタビュー企画。第2回となる今回は高峯ヘッドコーチに、サッカーを通じて子どもたちに伝えたいことを語ってもらいました。
 
【サカイクキャンプインタビュー企画】
第1回 高峯ヘッドコーチ(前編) 高峯ヘッドコーチの実績と指導理念
第2回 高峯ヘッドコーチ(後編) サカイクキャンプの子どもたちに伝えたいこと
第3回 武田キーパーコーチ 子どもたちをキーパーになって帰ってもらう
 

<サカイクキャンプとは?>

■チャレンジしながら「なぜ?」を考える
サカイクキャンプは考えること、チャレンジすることを楽しみます。常にサッカーの試合に近い状況でトレーニングをし、選手が考えながらプレーする環境を提供します。
 
■自分で考えるとは
・まずは疑問に思うこと
・何が良かったから上手くいったのか考える
・何が悪かったから上手くいかなかったのか考える
・どのように修正したら上手くいくのか考える
・(上手くできるようになることで)考える事がくせになる
・(上手くできるようになることで)考える事が楽しくなる
 
■キャンプ特徴
その1:“成功体験”を通し「自分で考える力」を身に付ける
その2:振り返りノートで自分の考えを整理する
その3:“質問”をベースにしたコーチングで、選手の考えを引き出す
その4:子ども15名以内に1人のコーチが帯同!
 
 
ドイツ留学でジュニアユースを指導し、帰国してからはベガルタ仙台ユース、大阪学院、神奈川大学と渡り歩いてきた。なぜ、いまジュニア年代(サカイクキャンプ)なのか。
 
 

■本当に必要な技術を身につけてもらいたい

「上のカテゴリーの選手をみていて、ジュニア年代でこれだけは教えておいてほしかった、という思いがずっとありました。技術はあっても状況に応じた判断ができない選手、私生活で人間として当たり前の判断ができない選手を多くみてきました」
 
土台となるジュニア年代こそ、やっておかなければいけないことは多い。神経系の発達に合わせた個人技術の習得もそうだが、ピッチ内外に関わらず、悪い習慣を取りのぞき良い習慣づけをすることがなにより大切なのだ。それが上のカテゴリーに進んだとき、あるいは社会に出たときに子どもたちの役に立つ。
 
「ピッチ内でいえば個人技術の部分です。先日、日本のサッカーを野球に置き換えて、打ったらファーストに走るはずがサードに走り出してしまうのが欠点だと言いましたが、まさにそこです。ドリブルなのか、パスなのか、シュートなのか。ポジショニングがあと50㎝左なのか、右なのか、前なのか、後ろなのか。そういった場面で適切な判断をできない子が多い。そこを伝えられたらと思います」
 
ボールの扱いがうまいだけの選手はたくさんみてきた。ドイツではボールの扱いは拙くてもゴールを決める選手がいる。それは良い判断をしているから。そういった選手が日本には少ない。
 
「エジルのように、優れた判断ができてしかもボール扱いがうまい選手が理想像だとすると、日本には優れた判断を養う環境が圧倒的に欠けています。サカイクキャンプでは、その優れた判断を子どもたちから引き出す環境を提供したいと考えています。マイボールの時にどのポジションをとればいいのか。攻めているときはシュートを打たないとゴールできないということ。守っているときは激しくチェックに行かなくてはダメだということや、ひとりがチェックにいったらもうひとりはカバーのポジションをとらなくてはいけないこと。そういったサッカーのベーシックな部分を、子どもたちが考えながら身につけてほしいです」
 
サッカーは技術を披露しあうスポーツではなく、どのようにゴールを奪うか、あるいはゴールを守るためにどのプレーを選択するのかを考える判断のスポーツである。ピッチ上では選手の判断によって局面が左右される。技術も大切だが、それを活かす術を伝えることをサカイクキャンプでは重要視する。
 

■教えるではなく答えを引き出す指導

では、高峯ヘッドコーチはどういった指導方法をとっているのだろうか。
 
「“教える”という意識ではなく、子どもたちから答えを“引き出す”ことを心がけています。ですので、基礎練習よりもゲームのほうが比率としては高くなります。基礎練習は考えなくてもできてしまいますが、ゲームは考えなければできません。ゲームで良いプレーをしたところを褒めてあげると、その子の記憶の中にしっかりと残って、また同じような状況になったときに良いプレーを選択できるようになります。そのように子どもたちがゲームの中で出した答えを肯定してあげることで正しい方向に導く、子どもたちの引き出しを増やしてあげることが大切です」
 
コーチングとは英語で「導く」という意味である。しかし、日本のコーチは皆、教える指導、つまりティーチングになってしまう。その教えるという行為が、子どもたちの可能性を奪っていることにも気づかずに。必要なのは導いてあげることであり、引き出してあげること。
 
「それと、ジュニア年代は、すごく真剣だし純粋なので、こちらが発した言葉に敏感に反応してくれます。コーチとしては楽しい反面、怖さも感じます。こちらが発する言葉の影響力が強いということです。間違ったことを言っても子どもたちは真剣に聞いてしまう。だからジュニア年代を見るようになって、言葉にもっと気をつけよう、もっと勉強しようという気持ちが強まりました」
 
もらったリンゴは毒りんごでも食べてしまう、その恐ろしさ。童話『白雪姫』では姫を憎んだ王妃がリンゴ売りに扮して毒リンゴを姫に与えるが、指導者は知らず知らずのうちに毒りんごを子どもに与えている可能性がある。そのことを高峯ヘッドコーチは熟知している。
 
「だからこそジュニア年代の指導は、子育ての経験があったり人間としてある程度の蓄積がある、ぼくのような人間がやるべきだと思います。日本では、経験の浅い指導者がジュニア年代、経験のある指導者が上のカテゴリーをみる比率が高いと思います。いや、決して若い指導者がダメだということではないです。若い指導者は動けるから、子どもたちの練習に交じってお手本になるプレーを見せてあげることもできますから。ぼくにも若いコーチだった時代があります。大阪学院では、俺についてこいと生徒を鼓舞して強引な指導もしました。そのときの指導に後悔があるわけではないですが、そうやってがむしゃらに突っ走ったからこそ、見えてくるものがあります」
 
それをサカイクキャンプやシンキングサッカースクールの指導に活かしたい。それが子どもたちのより良い未来につながると信じている。
 
 
次回は武田キーパーコーチの指導や考え方をお伝えします。お楽しみに>>
 
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