サカイクキャンプ

2014年3月27日

サカイクキャンプGKコーチ武田幸生インタビュー

サカイクキャンプの高峯ヘッドコーチ、武田キーパーコーチ(※千葉キャンプのみ帯同)がいかなる人物なのか、その経歴と指導の考え方に迫るインタビュー企画。第2回となる今回は高峯ヘッドコーチに、サッカーを通じて子どもたちに伝えたいことを語ってもらいました。
 
【サカイクキャンプインタビュー企画】
第1回 高峯ヘッドコーチ(前編) 高峯ヘッドコーチの実績と指導理念
第2回 高峯ヘッドコーチ(後編) サカイクキャンプの子どもたちに伝えたいこと
第3回 武田キーパーコーチ 子どもたちをキーパーになって帰ってもらう 
 

<サカイクキャンプとは?>

■チャレンジしながら「なぜ?」を考える
サカイクキャンプは考えること、チャレンジすることを楽しみます。常にサッカーの試合に近い状況でトレーニングをし、選手が考えながらプレーする環境を提供します。
 
■自分で考えるとは
・まずは疑問に思うこと
・何が良かったから上手くいったのか考える
・何が悪かったから上手くいかなかったのか考える
・どのように修正したら上手くいくのか考える
・(上手くできるようになることで)考える事がくせになる
・(上手くできるようになることで)考える事が楽しくなる
 
■キャンプ特徴
その1:“成功体験”を通し「自分で考える力」を身に付ける
その2:振り返りノートで自分の考えを整理する
その3:“質問”をベースにしたコーチングで、選手の考えを引き出す
その4:子ども15名以内に1人のコーチが帯同!
 
 
東京や神奈川でゴールキーパー(以下、GK)専門のスクールを開く武田コーチが、サカイクキャンプ(千葉キャンプのみ)に参加する。東急Sレイエス、東京国際大学で指導後、現在は神奈川大学体育会サッカー部のチーム指導や、TKDGKアカデミー代表、トレセン活動や全国各地でGKスクールを開催している。普及と強化、双方の現場で研鑽を積む武田コーチがサカイクキャンプで伝えたいこととは?
 
 

■ゴールキーパーを教わる環境が圧倒的に少ない

GKはオンプレー中に唯一、手を使うことを許された特殊なポジション。セービングやキャッチングといったプレーに代表されるように、手を使ってゴールを守るスキルが必要になるため、フィールドプレーヤーとは異なる練習方法が存在する。
 
チームに必ずいなくてはならないGK。しかし、GKをしていたからといって、そのまますぐに子どもを指導できるわけではない。それは特殊なポジションであるが故に、ただ単に経験だけではなく、指導対象やレベルに沿った指導が重要であるからだ。GKの専門的な指導を受けられる環境といえば、地域のトレセンに受かったり、Jリーグ所属チームの下部組織に受かった選手、専属のGKコーチがいるクラブチームに通う、一握りの子どもだけがGKの指導を受けることができた。つまりGKの指導は、いわゆるサッカーエリートだけが受けられるものだったのだ。
 
「チームやトレセンでGK指導を始めた当初、その方法や考え方について、Jリーグ下部組織のGKコーチに話を聞きに行ったりもしました。そうするなかでGKの指導が一握りの子どもだけしか受けることのできない現状に、違和感を感じるようになりました。GKを教わる環境が圧倒的に少ないなと。専門的なGK指導を受けることができない地域の少年サッカーチームに所属するGKは、お父さんコーチや若いOBコーチが独学で学んでGK指導をしているケースがほとんどだと思います」
 
GKはゴール前の最後の砦である。そのためどうしても責任を負いやすい。そこでのミスは即、失点につながる。GK経験の無いコーチは失点だけを責めすぎる。あるいは「なんで取れないの?」とチームメイトや親に責められるGKのフォローをしない。そういった環境で、子どもたちがGKを好きになってくれるだろうか。楽しくプレーできるだろうか。GKを嫌いになってしまう子どもも少なからずいるだろう。それではGKの普及にはつながらない。その現状を変えたかった。
 
「プロを輩出する、そこに近づける場所にはGK指導者がいるのに、GK指導の入り口、だれでも受けられる場所にはGK指導者がいない。じゃあ誰がやるの? って考えた時に、自分がやるしかないと思いました。九州や関西でGKスクールがあることは知っていたけど、関東にはほとんど存在しませんでした。2006年に横浜のフットサルコートを貸していただいて、GK専門のサッカースクールを開催したのがきっかけです。ボランティアではなく、プロコーチとして。ぼくにとっては大きな挑戦でした」
 
トレセンや上のカテゴリーの子どもと違い、スクールには様々なレベルのGKがやってくる。そこで必要とされる指導は、トレセンやチームなどで求められるそれとはまた違った。
 
「GKコーチは指導できる人数に限りがあります。チーム指導では1~2人、多くても4~6人でしょうか。それが、スクールでは10~20人ものGKを同時に指導しなければいけない。そうなってくるとチームで培ってきたものとはまた違った指導力が必要です」
 
GKスクールの参加者全員に10割を伝えることは難しい。そうではなく、全員にGKの肝となる要素を伝えていくことができればいい、と武田コーチは考える。
 
 

■スクールで10割伝えることの問題点

「最もあってはいけないこと、それはぼくがスクールで教えたこととチームのコーチの教えたことが全然違うということ」
 
矛盾を感じてしまうと子どもは成長しない。スクールで10割を教えようとすれば、そういった矛盾を抱え込む子どもを増やしてしまいかねない。だからこそ、GKの肝となる原理原則に重点を置いて教えるようにしている。
 
「教えすぎず、子どもたちが何に興味を持っていて、どうすればGKを好きになってくれるのかをいつも考えています。大人と比べて子どもは吸収するスピードが早く、言葉で伝えるより実際にプレーで見せるほうが効果的なこともあります。コーチングも『ここはこうやってキャッチングしよう』ではなくて、『こういうキャッチングの仕方もあるよ。知ってた? やってみれば?』くらいのニュアンスで与えています」
 
セービングやハイボールの処理についての細かい技術を与えることもあるが、それはあくまでアドバイス程度に留めておく。
 
「スクールでは参加する子どもたちのレベルがバラバラで、遊び重視と学び重視に二分することがあります。そういうテンションを求めていたんじゃないのに、と。日本は遊びか学びかどちらかはっきりしないと気がすまない人が多いですが、それも極端な話です。大切なのはバランスです。遊びの中で学ぶこともあるし、学びの中にも遊びを入れ込んでいかなければいけない。それをどれくらいの配分でオーガナイズしていくか。それがぼくらコーチの仕事です」
 
 

■カラダもココロもゴールキーパーになる

「サカイクキャンプは4日間あります。4日もあれば絶対にうまくなると思います。GKは常に受け身、リアクションのポジションです。ですから、シュートを防げた、防げなかったという結果よりもその中身にも目を向けるべきです。触ろうと手を出した、マークがハズれていたから声を出して指示を出した。結果にフォーカスされがちなポジションだからこそ、そういった子どもたちの細かいチャレンジに気づいてあげて、たとえゴールされたとしてもそのチャレンジを褒めてあげるようにしています。ナイスキーパーだったよ、って」
 
GKはなんとなくシュートに反応して防げることもある。結果だけを見るとシュートを防いでいるが、それは決してナイスキーパーではない。そこをしっかりと見極めること。そして「ナイスキーパー」、「ナイスチャレンジ」という声をかけることでそのプレーを反芻してもらうこと。その繰り返しがGKとしての錬度を上げる。
 
「スキルも大事ですが、それはGKの本質ではないです。いつも負けてしょぼくれて帰ってきていたのが自信を持って胸を張って帰ってくるようになったとか、帰りの車の中でご両親にゴールを決められてしまったことを指摘された時に『違うよ、あれは止めようとしたもん』と言い返せるようになったりとか。それが心もGKになるということです。得点されてもナイスキーパーのときがあります。反応したシュートを止めるためためにはどうすればいいか。じゃあ、いま真横にセービングしているのを少し前に飛んでセービングするようにしよう。など、自ら考えるチカラを身につけて欲しいです。これがカラダもGKなるという事です。つまり、サカイクキャンプを通して、カラダもココロもGKになる4日間にできれば、必ず技術的にも精神的にもうまくなると考えています。
 
そのようなGKとしてのこだわりを子どもたちに持ってもらえるように、サカイクキャンプも頑張りたいと思います」
 
 
武田幸生㈱アレナトーレ所属
1970年11月27日生まれ、北海道出身。
1999年からジュニアユースチームのGK指導を8年指導し、現在は大学でGK指導中。トレセン活動やGK指導普及活動にも積極的に取り組み、2006年より横浜でGKスクールを開校。草の根からトップまでのGKを指導のスペシャリストを目指して活動中。日本サッカー協会公認B級コーチ、日本サッカー協会公認ゴールキーパーB級。
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