少年サッカーあるあるお悩み相談室
2016年9月27日
エースからチームメイトへの罵声、どうすればなくなるの?
「おい、なにやってんだよ!」「もっと俺に早くパスを出せよ!」
そんなエースの罵声に心を痛めている親御さんは少なくないかもしれません。エースの子どもはすごくうまい。彼がうまいからチームが勝つことができる。だけど、あの罵声は何とかならないものだろうか……。
エースの罵声には、いったいどう対応すればよいのでしょうか。
お話を伺うのは、東京都武蔵野市の関前サッカークラブ(以下、関前SC)の指導を続けて約25年になる小島洋邦さん。教え子には、なでしこジャパンの岩渕真奈選手や、Jクラブの下部組織へ歩みを進めた子どもたちがたくさんいます。みなチームのエースでした。(取材・文 杜乃伍真 写真 新井賢一)
■親同士での解決は揉める恐れあり
「よくあるのは、周りの親御さんが、罵声を発しているエースの子どもの親御さんに『どうにか直してください』と指摘してしまうケースです。コーチには相談せずに、親同士で解決しようとすると、言い方によっては親同士が揉める可能性があります。また、指摘された側の親御さんも申し訳ないと悩んでいるケースもあります」
小島さんは「周りの親御さんがエースの子どもの親御さんに『直してほしい』と願い出たところで、すぐに罵声がなくなるほど単純な問題ではないと思います」と言い、こう続けます。
「親御さん同士で解決するのではなく、コーチが時間をかけて、じっくりとエースの子どもを指導していく姿勢が必要になるのではないでしょうか。少年サッカーは、エースの子どもの存在次第で目の前の試合の勝敗が大きく左右されてしまうケースが多々あります。そのことをまずコーチがしっかりと理解し、目先の勝利だけに一喜一憂せずに、長いスパンでエースの子どもの将来を考えてあげるような視野を持たないと、この問題はなかなか解決していかない問題だと思うのです」
■なぜ、エースは罵声を飛ばすのか
小島さんは、エースの子どもが罵声を発してしまう理由をこう見ています。
「『すごく一生懸命で目の前の試合に勝ちたいから』か『わがままで身勝手』か、ふたつの理由に分けられると思います。それと一方で、エースの子どもに罵声を浴びせられてしまう子どものプレーについても、本当に一生懸命にプレーしているのか、気持ちが入っていないプレーをしているのか、という目線で見なければいけません。エースの子どもの罵声一つとってもさまざまな捉え方ができるので、本当にデリケートで難しい問題だということは周りにいる親御さんも頭に入れておいてほしいです」
ただ、コーチとしては、どんな理由があろうとも罵声を浴びせるエースの子どもを変えようとする姿勢が必要だと小島さんは考えています。そういう子どもに1年後、1年半後、2年後にどういうふうに育ってほしいのか。そういう視点を持つコーチの存在が子どもを変えるきっかけになるといいます。
「どうしても勝ちたいからと『お前なにやってんだよ!』と浴びせてしまうエースの罵声を、時間をかけながら徐々に『俺も頑張るからお前も頑張ろうよ!』という言葉に変わるようにしていかないといけません。たとえば、僕がコーチならば『お前も一生懸命なのはわかるけど、お前のほうがうまいからミスが少ないだけで、あいつと同じミスをしているし、あいつも一生懸命にやっていると思うよ。だからもうちょっと優しい言葉をかけられないかな?』、そんなふうに伝えます。もちろん、コーチが一度伝えたくらいでその子の罵声がすぐになくなるほど甘くはありません。エースの子どもを練習グラウンドで捕まえては、端々でそういう話をしてあげて、チームというものを意識させていくのです。1年、1年半と時間をかけながら、エースの子どもが周りの子どもたちに気を配れたり、周りの分まで必死になって頑張れたりするように、チームのなかでエースの子どもが活躍できる環境を作っていかないといけないのだと思います」
そのような取り組みを長い時間をかけてしていかない以上、エースの子どもの罵声はなかなかなくなっていかない、だから親御さん同士で解決しようとしても解決に導くのは難しい、と小島さんは考えています。
子どもの将来までしっかり見通した指導ができるコーチの存在がカギを握ります。
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