なぜバルサは勝利と育成が両立するのか?

2012年1月23日

競争することは勝利を知ること。そして何よりも敗北を知ることだ

 
「育成しつつ常に勝利する」FCバルセロナの人材育成術について、バルサのカンテラのテクニカルディレクターであるアルベルト・プッチ・オルトネーダが全4回に渡り解説。第3回目は「競争の考え方」について。
 
 
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■競争することと勝敗は別の話

本書(FCバルセロナの人材育成術)で扱っている『育成年代では何を優先すべきか』というテーマについて、現在バルサの下部組織で総責任者を務めるアレシャンコの観点は、とても興味深いものです。
 
勝つこと、競争すること、教えることは、どれも欠かせませんが、バルサのようなクラブの責任者たちは、若いサッカー選手たちが競争することを学ぶことに重点を置いています。競争心は、選手の成長には絶対に欠かせません。しかし、「競争するからといって常に勝たなければならないわけではない」というのがポイントです。競争することが大事なのであり、勝敗はまた別の話なのです。
 

■敗北には敬意を、勝利には謙虚を

アレシャンコ:「勝つことは重要だ。しかし勝利を得るためには、物事を上手くやらなければいけない。正しく根気よく努力すれば、往々にして勝利はついてくる。しかし、常に勝てるとは限らないことを、私たちは理解しておかなければならないだろう。最も重要なのは、競争することを学ぶことにある。競争することを学ぶということは勝利することを学ぶことであり、そして何よりも、負けることを学ぶことも意味している。平日の間、子どもたちは週末の試合で競争するために練習する。結果が勝利であろうと引き分けであろうと、はたまた敗北であろうと、常に競争することが大切だ」
 
すべての人、特に子どもたちは、勝利にも敗北にも等しく直面した方がいいと思います。敗北すればプライドは傷つくし、落ち込みもするでしょう。だが、相手への敬意だけは決して忘れないようにしたいものです。
 
もし、充分に努力した末の敗北であれば、誰だって当然傷つくでしょう。大事なのは「今日は相手の方が良かったのだから彼らを祝福しよう。でも次は自分たちが勝つぞ」という気持ちです。敗北には敬意を、勝利には謙虚を。ラグビーのように、伝統的に相手を尊重する文化を持つスポーツでは、試合が終わると、「ノーサイド」といって両チームが互いを褒め称えます。サッカーファンがラグビーの試合の最後の数分にスタジアムにやって来たら、どちらのチームが勝ったか戸惑うかもしれないぐらいです。
 

■サッカーはゲームであり、必ず勝者と敗者があることを理解する

勝利に酔いしれるのは、ロッカールームに戻るまで控えた方がいいと思っています。試合に勝ったのであれば、相手に手を差し出し、努力を称え、自分たちは運が良かったとコメントすることです。喜ぶのはロッカールームに戻ってからでも遅くはありません。
 
謙虚な気持ちはとても大切だと思います。そして、試合に負けた場合、「試合に負けて悔しがるのはいいし、それは自然なことだが、それはシャワーを浴びるまでにしなさい」と教えています。頭からシャワーを浴びている間に、サッカーはゲームであり、必ず勝者と敗者があることを理解する努力をしなくてはいけないのです。
 
 
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アルベルト・プッチ・オルトネーダ//
Albert Puig Ortoneda
FCバルセロナ「カンテラ」テクニカルディレクター。1968年生まれ。FCカンブリルスのインファンティルチームを監督し、同市内のベテランス・サッカースクールに勤務、その後、レウス・デポルティウと契約した。FCバルセロナのオブザーバーとして、当初タラゴーナ県、次にカタルーニャ州全域を担当。2002年、バルサの下部組織のスタッフとなる。アレビンBを2シーズン率い、2008年からはインファンティルBを監督している。また、カタルーニャサッカー協会のコーチングスクールで教師を務めている。
受賞歴:スペインスポーツ高等委員会のエレナ王女賞、エルネスト・リュチ財団のスポーツマンシップ賞、ジョアン・クレウス・スポーツマンシップ賞、スポーツマン祭典の『スポルト』紙のフェアプレー賞、カタルーニャサッカー協会のフェアプレー賞、カンブリルス・スポーツマンシップ賞など。
 
 
 
本書は、有名人によって語られたサッカーのエピソード本とは違う。プロサッカー選手になるという夢を叶えた選手たちの経験や彼らが大切にしている価値観を考察し、その中から、夢の実現を目指す若いスポーツ選手、指導者、教育者、更には選手の保護者に役立つエッセンスを抽出し、そしてそれらを皆さんと共有するために書かれたものである。
 
・第1章 FCバルセロナの指導理念を実践する現役の指導者たち
・第2章 カンテラが生んだスター選手たち
・第3章 経験者が語るFCバルセロナの育成論
・第4章 子どもをサッカー選手にしたい親たちへ
・第5章 教育者が子どもに与える影響
 

■FCバルセロナの元コーチが教える「サッカー選手が13歳までに覚えておくこと」

FCバルセロナの選手や世界のトッププロをサポートしてきたスペインの世界的プロ育成集団「サッカーサービス社」が監修した選手が見て学べるU-13世代の選手向け教材。彼らが分析した「Jリーグ」の試合映像をもとに、攻守の個人戦術からグループ戦術まで、選手のサッカーインテリジェンスを磨く32のプレーコンセプトを解説。将来、プロや海外で活躍することを目指す選手必見の教材。
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