平岡和徳氏に聞く「子どもたちの未来に触れる」スポーツ指導・学校部活動

2018年10月12日

これからの部活に求められる「3K」とは? 指導者の負担減のために必要な24時間をデザインする力

■部活動を通じて主体性を育もう

校長室に飾られた優勝旗とトロフィー。これからは教師も24時間をデザインする必要があると平岡氏は言います。

―― その温度差は、どのように埋めていくべきでしょうか。

平岡 部活動はあくまで『生涯スポーツにつながる活動』ですから、勝利至上主義ではなくスポーツに親しむということが中心にあるべきです。「プロになりたい」とか、「インターナショナルな選手になりたい」という子ども達は、親や本人が選択していいと思うんです。サッカーでは特に顕著ですが、首都圏では学校部活動よりもクラブが中心になっていますよね。

―― しかし、経済状況などで誰もが民間のクラブでスポーツができるわけではありません。

平岡 小体連がなくなり学童スポーツに移行していくなか、家庭の事情でやりたくても運動ができないという子どもを減らす意味でも、部活動は重要です。また、何も運動をしていない子や、毎日3~4時間もやる子より、週に1~2時間程度の定期的な部活動、スポーツを行うグループの方が学力調査の結果が高いというデータもあります。

「知・徳・体」という言葉がありますが、体を鍛え、徳を学んでこそ知が伸びるんだと、「体・徳・知」と順番を変える先生もいらっしゃいます。私は、「体」が土台で、その上に「徳」と「知」を重ねていくと考えています。土台の広がりの大きさが、ピラミッドを大きくするんです。

―― たしかに、不健康では明るく過ごせませんね。

平岡 元気なら、やっぱり笑顔が出てくるんです。笑顔は子ども達の才能を大きく広げていくテーマですし、その人たちのパワーをさらに高めていくんですよね。

―― 部活動で身に付けるものには、ほかにどんなものがあるでしょうか?

平岡 部活動では、教室や日常の家庭生活では経験できない、組織的な社会性を学ぶことができますし、個性が発揮され、自己肯定感にもつながるでしょう。スポーツに親しむというスタンスの中で、子ども達から主体的に「勝ちたい」「もっと強くなりたい」という思いが発動された時に、「じゃあ、今度の日曜に練習試合やってみようか」という風に、大人がサポートしていけば良いわけです。

―― そうした主体性はスポーツ以外の場面でも生かされますね。

平岡 素晴らしい判断力がつくということですからね。今はアクティブラーニングといって、各科目の授業でもそうしたことに取り組んでいます。新しい学習指導要領でも、「主体的」で、「対話的」で、「深い学び」が謳われていますし、授業も部活動も、黙って聞いている時代ではありません。

与えられたものをこなすのではなくて、自分たちでルールを作り、自分たちでミーティングができる。そういう主体的な組織体を作っていくことも、これからの部活動では大事なのではないかと思います。

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