世界を見てきたコーチが語る。いま求められる守備の指導法
2017年11月21日
「バルサの闘将」も学び続けていた『守備における個人戦術』
■なぜJリーグは攻守の切り替えが遅いのか?
少し厳しい言い方になるかもしれませんが、一般的なJリーグの選手達の『攻守の切り替え』のスピードは、世界のトップレベルに比べると明らかに遅いです。その理由のひとつに『守備時の認知の欠如』があります。
日本の多くの選手が、「いつプレスに行くべきか」という理論を理解していない、あるいはチームとして共有していないので、選手個々がバラバラにプレスに行き、その結果かわされてしまう。
あるいはボールを奪うことができたとしても、周りの選手が連動していないので、素早く攻撃に移行することができないという現象が起きています。それを改善するためには、まずは守備の個人戦術を身につけ、その後にグループ、チームとして守備の戦術を構築していくことが必要です。
繰り返しになりますが、それは指導者が選手に対して提示する部分であり、指導者が選手に教えることができなければ「選手が自分で判断し、チーム戦術として機能する」ことはありえません。言い換えれば、守備のオーガナイズは指導者がすべき、重要な仕事のひとつなのです。
■「バルサの闘将」が改善した「守備の個人戦術」のポイント
ここでもうひとつ、Jリーグの試合でよく見られる、守備のミスをあげましょう。
相手チームのFWの選手が中盤に降りてボールを受けようとした時、センターバックの選手がその選手について行きすぎてしまい、ゴール中央にスペースを空けてしまうミスです。 結果として、相手チームのサイドの選手にゴール中央のスペースを使われてしまいます。
もうひとつが、相手チームのFWが最終ラインの裏へと抜ける動きをするときに、ボールが出てこないにも関わらず、マークを離さずについていってしまうことです。その結果、最終ラインが下がり、相手チームの別の選手がプレーするスペースを与えてしまうことがあります。
この状況では、最初は相手FWについて行き、途中でパスが出てこないと判断したところでマークを止め、最終ラインに戻ることが必要です。かつて、我々が『FCバルセロナの闘将』と言われた選手のコンサルティングをしたときにも、同様のミスが見られました。
そもそも彼は「マークしている相手を絶対に止める」という強い気持ちを持っている選手なので、必要以上に相手選手に近寄ってしまうクセがありました。
そこで「ある程度まではマークするが、ボールが来ない場合はマークを離して最終ラインに戻る」というコンセプトを教えたところ、大幅に改善が見られ、プレーの判断が良くなりました。
このように、選手にとって必要な守備のコンセプト(個人戦術)を身につけるように指導することで、 チームとして守備の精度が向上します。守備時の選手のプレーを分析するときに参考にしてみてください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
続きは、次回の連載でお伝えします。
グラシアス、アデウ!
(注:カタルーニャ語でありがとう、さようならの意味)
フランセスク・ルビオ/Francesc Rubio Sedano
サッカーサービス社の分析、コンサルティング部門責任者として、選手やクラブ育成コンサルティング業務を担当。C.Fカン・ビダレットの下部組織(U-18)の監督、コーディネーターと、カタルーニャサッカー協会技術委員を兼任。2014年までJFAアカデミー福島U13の監督も務めた。
第1回>>「日本の選手の多くは守備の仕方をしらない」
第2回>>「バルサの闘将」も学び続けていた『守備における個人戦術』
第3回>>「チームの守備コンセプトをしっかり選手に伝える」それが指導者の仕事
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