池上カップ開催レポート
2017年12月 5日
サッカーをもっともっと楽しめるように。「池上カップ」を通して、池上正コーチが伝えたかったこと。
9月23日(土)に、池上正コーチとサカイクの共同イベント「池上カップ~離れて見守ろう。~」が京都府宇治市の山城運動公園で開催されました。
小学生を対象としたこの大会は、サカイクで「あなたが変われば子どもは伸びる!池上正コーチングゼミ」を連載中の池上さんが日頃から伝えている、「大人が離れた時こそ、子どもは力を発揮する」というメッセージを、指導者や保護者にリアルに感じてもらうために企画されました。その内容は、一般的な大会とは一線を画すものです。
では、池上カップとは実際、どのような大会なのでしょうか。参加した子どもたちは、どんな姿を見せていたのでしょうか。そして、指導者や保護者は、それを見て、どんなことを感じたのでしょうか。大会を振り返りながら、そんなテーマに迫っていきます。(取材・文:本田好伸)
■池上カップの様子をまずは動画でご紹介します。
■大人のいないベンチの子どもたちは真剣そのもの
今まで出会ったことのないような、静かな大会??
それが池上カップに見られる大きな特徴です。「静か」というのは、本来あるはずの"何か"が、そこにはないからです。それは一言で言うならば、「大人の声」です。
池上カップには、選手、監督やコーチ、保護者に向けた、特別ルールが設けられています。
●選手
「参加選手全員が同じ時間、試合に出場すること」
「すべての試合、全後半で別のポジションにつくこと」
●監督やコーチ
「試合中はベンチではなく、本部席で池上コーチと観戦してもらうこと」
●保護者
「サカイク10か条に沿った応援をしてもらうこと」というものです。
つまり、試合中のベンチには、大人の姿がありません。試合に向けて、子どもたちは自分たちでメンバーを考え、試合プランを練って、試合中も、自分たちの考えに基づいて選手交代を行うのです。その結果、いつもであれば聞こえてくるベンチの監督、コーチからの指示がなく、試合を見守る保護者からも、選手のプレーをあれこれ指し示してしまうような過度な応援はありません。だからこの池上カップは「静かな大会」なのです。
でも、試合が繰り広げられているピッチ、そして子どもたちが座るベンチに目を向けると、そこは決して、「静か」ではありません。普段とは異なる状況に戸惑いを見せながらも、選手たちはしきりに声を掛け合い、指示を出し合い、ベンチでは戦術ボードを眺めながら、「もっとこうしないと」とか「あいつはもうすぐ交代しなきゃ」といった話し合いが行われています。その光景はやはり「静か」なものではありませんでした。
ハーフタイムになると、子どもたちは一カ所に固まって、メンバーチェックに余念がありません。「●●はどのポジションをやったっけ?」、「この試合は誰が交代した?」。みんなが一斉に話し合うと収集がつかなくなりますが、こういう場面では、キャプテンかもしくは、他の誰かがリーダーとなって、みんなの意見をまとめていました。
試合に向けては、受付で配られた、ピッチの図が描かれた紙に、選手とポジション配置を記入していました。前半と後半でそれぞれ異なるポジションでプレーするにはどうしたらいいのか、全員が均等に出場するにはどうしたらいいのか。普段はあまり気にしていないようなことにも気がつき始め、子どもたちはどんどん積極的になっていました。
ただし、試合ではそんなプラン通りにはいきません。「今、スコアは何対何?」、「時間は何分?」という初歩的なところから、次第に、「そこは顔を上げてないから周りが見えないんだよ」といった具合に、試合を通して、あらゆるところに注意が向かうようになっていきます。だからこそ試合後には、勝った、負けたという勝敗よりも、自分たちがやりたいことができていたのか、次はどういことに気をつけたらいいのかと、子どもたちの成長が伺えるシーンがいくつも見られました。