教えて西部さん! 初心者の素朴な疑問に答えたサッカー観戦Q&A
2018年7月24日
実況解説でよく聞くけど「裏」って、どこのこと? 「表」はあるの?
それでは次の質問と回答をどうぞ。
Q.「裏」って、どこのこと? 「表」はあるの?
A.だいたいDFよりもゴール寄りの場所が「裏」。「表」はあまり使いません。
Q.スルーパスと普通のパスの違いがわかりません。
A.ディフェンスラインの裏をつく決定的なパスです。
【西部さんの解説】
サッカーで使う「裏」は、表裏の裏ではなくて、主に背後という意味です。英語ならビハインドで、バックではない。「ディフェンスラインの裏」という使い方をよくしています。これはラインの背後という意味で、位置的にはDFと攻めているゴールの間の空間になります。「ディフェンスラインの表」はほぼ使っていませんね。この場合は「手前」とは言っても「表」とは言いません。
スルーパスは英語ですが、英語圏でthrough pass という表現はあまり使われていない気がします。間を通っていくパスですから、相手のDFの間ということになるでしょうか。ただ、DFの間を通すというより、ディフェンスラインの裏へ出す低いパスを指すことが多いと思います。通れば決定的な場面になるパスですね。
パスはショートパス、ロングパス、クロスボールなど、さまざまな表現があります。ボールを味方につなぐプレーはすべて「パス」ですが、決定的なチャンスを演出するスルーパスはタイミングと球質が成否を左右します。
ペナルティーエリアの横のラインにDFがいるとして、そこからゴールまでの距離は約16メートルになります。ただしGKがいますから、スルーパスで狙えるのはせいぜい10メートルの深さということになります。そこへボールが蹴られてから味方が走るので(先に飛び出すとオフサイドになりやすい)、そんなに速いボールを出せません。味方が10メートル以内に追いつけるような速度のパスになります。まあ、これも状況によりけりですが、あんまり速いパスは味方がとれないか、GKのボールになりやすいです。
タイミングも重要ですね。遅ければオフサイドになってしまいますし、早すぎると味方が遅れてしまう。感覚的にはディフェンスラインの裏にボールを「置く」ぐらいのパスになるでしょうか。
普通のパスよりも、出し手のセンスが必要になると思います。スルーパスの名手として思い浮かぶのはジーコですね。タイミング、コースとも完璧なパスを何度も通していました。長い距離のスルーパスだとルイ・コスタ、ミッシェル・プラティニが上手かったと思います。味方が裏へ飛び出した瞬間に、足下へスパッとパスを入れるのが上手かったのはカルロス・バルデラマです。ミカエル・ラウドルップは長いのも短いのも上手くて、この人が最高だったかもしれません。現役の選手なら、やっぱりメッシでしょうか。メスト・エジルもスルーパスのセンスがありますね。