お父さんコーチや少年団にオススメのトレーニング特集

2024年4月13日

育成年代のサッカーコーチが最初に理解すべき「指導者の心得」とは?40万人の子どもを指導した名コーチが説く

『サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」』では、指導者に向けた動画を毎週配信している。動画は国内外の経験豊富な指導者による、ワンランク上の指導を目指す人に向けられたもので、「通常はなかなか見られないチームの練習を見ることができて勉強になる」といった声を多数いただいている。

さらに2021年からは、新たな試みとして「指導経験の少ない人」に向けた動画の配信を開始した。「指導を始めたばかりで、基礎的なことを知りたい」「U-8~U-12年代の子どもたちでもできる練習メニューとポイントを知りたい」と考える指導を始めたばかりの方や指導経験の浅いボランティアコーチの方には、ぜひお役立ていただければと思う。(文・鈴木智之)

(※COACH UNITEDからの転載記事です)

この内容を動画で詳しく見る

サッカー指導者を始める上でまずは「スポーツの性質」を理解する

この「指導ビギナー向け」動画の講師は、育成年代指導のスペシャリスト・池上正氏だ。最初のテーマは「指導者の心得」。いくら練習メニューや指導メソッドを知っていたとしても、「指導者としてどうあるべきか?」「どのような考えのもとに、子どもたちを導いていくか?」という土台がないと、良い指導をすることはできないという考えのもと、このテーマ設定に至った。

動画の中で池上氏は「現代のスポーツ」というテーマで「勝利至上主義の弊害」「大会ありき(大会に出ないと意味がない)」という問題点を投げかける。

「試合をする意味とは何なのでしょうか? 試合に勝つのが良いことで、負けるのは悪いことという考えがあり、メディアでも『絶対に負けられない戦い』などと煽るので、子どもたちもそう考えているのかもしれません。ですが、試合は自分たちに何ができて、何ができないかを推し量るためのもの。勝ったときにはなぜ勝てたのか。負けたときには、何が足らなかったのか。どうすればよかったのか、これからどうしようかと考える材料。それが試合の意味です」

大会に出るために練習するのではなく、試合を楽しむこと。自分たちの力量を計ること。強いチームと試合をすることで頑張れたり、頑張ること自体を楽しむこと。それがスポーツの本来の意味だと、池上氏は解説する。

日々のトレーニングから試合を適度に取り入れる

「サッカーの性質を理解する」というテーマの動画では、サッカーは足でボールを扱うスポーツゆえに、技術優先の指導になること、反復練習をたくさんしてしまいがちなことなどを指摘。

サッカーは足でするスポーツだが、走る、跳ぶ、ぶつかる、バランスをとるなど、様々な運動能力が必要だ。そのため「コーディネーションが大切で、他の運動もバランス良くやる。サッカー以外の運動も同時にすることを忘れない」「学年に合わせた人数やコートの広さを理解する。必ずしも8人制が良いのではない」(池上氏)とアドバイスを送っていく。

さらには「サッカーはゲームであること」というトピックでは、「子どもたちの中に、試合が嫌い、サッカーの試合に出たくない子が育ち始めてきています」と語る。

「強くなるために練習ばかりして、なかなか試合をしない。対戦相手が強くて、なかなか勝てない。いつも失敗する。その結果、周りの選手やコーチから指摘されるとなると、試合に出たくないという気持ちになる可能性はあります」

さらに、こう続ける。

「サッカーは楽しむためにあるので、まずは試合をすることを考えましょう。そして、サッカーはチームスポーツです。1対1の練習はチームではないので、最低2対2からスタートすると良いと思います」

2対2の設定の場合、自分ともうひとりの味方がいる。そのため、ボールを持った選手は自分でドリブルを仕掛けるか、味方にパスをするかという「判断」が生まれてくる。それこそが、サッカーの上達に必要な要素だ。

「子どもたちには、ひとりだけの技術練習にさせないように、仲間と協力してプレーするとはどういうことかを体験させましょう。勝ち負けがある、ゲーム形式の練習にすると、子どもたちは楽しくてどんどんやります。さらに勝ち負けがあると、判断する要素が出てきます。判断が必要な設定のトレーニングをすることで、試合での良いプレーにつながります」

1日のトレーニングを構築する上で基本となるのが「M-T-M」という概念

3本目の動画では、どうすれば子どもたちが自分で判断し、プレーすることができるようになるのかという考え方を紹介している。その基本となるのが「M-T-M」という概念だ。

これは「マッチ―トレーニング―マッチ」の略で、試合で出た課題をトレーニングで改善し、さらに試合に向かうサイクルのことを言う。

「1日の練習をM-T-Mにすると、子どもたちも理解しやすいです。試合をすると課題が見えるので、それをトレーニングし、次の試合でその課題をクリアできるかといった形で、トレーニングを組み立てていきます」

具体的には、1日の練習時間を90分と仮定すると、最初の30分は試合、次の30分は試合で出た課題を解決するためのトレーニング。そして最後の30分は試合をして、トレーニングでしたことが、試合の中でできているかをチェックするという流れだ。

さらに動画では「課題をどのように整理するか?」についても言及。個人の課題とチームの課題の分け方。技術的な課題なのか、戦術的な課題なのかなど、様々な考え方を提示するとともに、トレーニングのアレンジについても掘り下げていく。

各動画は10~15分程度にまとまっている。池上さんの親しみやすい語り口、わかりやすい資料によって、理解しやすい内容になっているので、ぜひ指導を始めたばかりの方や指導経験の浅いボランティアコーチの方は、一度見てみてほしい。育成のスペシャリストが指導ビギナー向けに語る貴重な動画から、たくさんの気づきと新たな考え方が得られるはずだ。

この内容を動画で詳しく見る

【講師】池上正/
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。 12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

1

関連記事

関連記事一覧へ