蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
2017年5月17日
チームでいじめ発見どうしよう問題
息子の所属チームでいじめを発見したサッカーママからいただいた質問です。すでにコーチには相談したものの、解決に向けて動く様子はなく、どうしたらいいのか悩んでいるとのこと。
自身もサッカー少年少女の母として子育てした経験を持つ、教育・スポーツジャーナリストの島沢優子が、読者の悩みに答える『蹴球子育てのツボ』。今回はチームでいじめを発見したときの大人として、親として心がけたいことをアドバイスします。(文:島沢優子)
<サッカーママからの相談>
こんにちわ。9歳男児の母親です。
息子は地域のサッカーチームに入っていて、同じ学年の子が11人所属しています。
私は今役員をしているため毎回グラウンドにいます。
先日、自分の子ではないのですが、このチームにいじめがあると確信してしまう出来事がありました。いじめの内容は、Aくん(いじめれる子)がBくん(いじめられてる子)の昼食を奪い投げつける、試合中暴言吐く、試合の合間に蹴る、殴るをコーチや保護者のわからないとこでやる。といった内容です。
コーチも気付いてはいたようですが、「様子を見ましょう」の一点張りで何もしません。どうしたらよいのでしょうか?
<島沢さんのアドバイス>
■まずはコーチに一任。いじめる子の背景を見てあげることが大事
よそのお子さんでも、こうやって心配してサカイクにメールしているお母さんは、とてもやさしい人なのでしょう。コーチは「様子をみましょう」と言う、とあるので、すでに担当のコーチにはお知らせしたわけですね。
さて、これが悪質ないじめかどうかの判断はつきませんが、単なる「子どものけんか」でも、いじめだったとしても、まずはチームのマネージメントをしているコーチに一任するべきでしょう。
昼食を奪ったり、試合中に暴言を吐いたり、乱暴をしているようですが、それは少しふざけた感じなのでしょうか? 9歳ということは3年か、4年生ですね? これが、複数の人数や、集団でひとりの子に危害を及ぼすのであれば、コーチはすぐさま止めに入り、チーム全体の問題としてみんなで話し合わせるべきだと思います。
でも、ひとり対ひとりの場合、以前から確執か何かあるのかもしれません。コーチが様子を見たいのは、そこに何か理由があるのかもしれません。
たとえば、いじめている子どもの家庭環境はどんなものなのでしょうか。経済的に豊かでも、子どもの心がさびしい場合もあります。ストレスをためた子どもは、身近にいる弱い立場の人に対してそれを発散するのはよくあることです。いじめる側の子どもについては背負っているものをよくみてあげなくてはいけません。
今の子どもはそれぞれが種類の違うストレスを抱えがちです。サッカーでも勉強でも、親や周囲の期待に押しつぶされそうな子。家庭が複雑で、生きづらい子。兄弟姉妹と比べられるなどさまざまです。サッカーを楽しくやることでストレス発散になればよいのですが、そのサッカー自体がストレスのもとになっているケースも多々あります。
そんな子どもたちに大人ができるのは、とことん彼らの気持ちに寄り添うことです。
「乱暴を働いたとき、どんな気持ちだったの?」「なぜたたいちゃったのかな?」「それはいいことなのかな?」「どうしたらいいと思う?」
そんなことをコーチの方がやってくれると良いのですが。
■大人が先に動いていじめをつくり出さないこと
対して、いじめられたとされるお子さんは、どんな様子だったのでしょうか? 「いじめられるからサッカーをやめたい」と自分の親に話しているのでしょうか? もしくは、まったく平気で普段通り練習や試合に来ているのでしょうか?
ひとつ気をつけなくてはいけないのは、いじめを大人がつくりだしてしまうことです。
大人が見ていて「いじめだ!」と感じたとしても、被害者であるはずの子どもも、加害者とされる子も、そんなに深刻に感じていないことがままあります。いじめられているようにみえて、「こないだは僕のほうが蹴ったんだよね」ということもあります。
お母さんたちが本当につまらないことで夫婦げんかをするように、子どももけんかをします。いずれも、あとで理由を尋ねられても「さて、なんで自分はあんなに怒ってたんだろう?」ということは、大人でも、子どもでも、よくあることです。
子どものけんかの場合、大人たちが先に騒ぎ始めると、子どもたちは「深刻ないじめ」に気づく経験さえできません。そのうえ、ふざけ合っていただけなのに、被害を受けた側の親が怒ってしまって「サッカーはもうやめさせます」みたいな結末になることは、案外少なくありません。
ここはひとまず、コーチの判断に任せましょう。
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