蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2017年6月14日

リフティングできなきゃ罰走! お父さんコーチがえこひいきする問題

■今目の前にある試練は、いずれ人生で経験する課題を乗り越える力になる

少し話題がそれますが、私を含め、少年サッカーに家族でのめり込んでいた親たちは、子どもが中学や高校、大学生になると「なんであんなに毎日、サッカー、サッカーって騒いでいたんだろう?」とため息交じりに話します。勉強ときちんと両立していたならまだしも、サッカーを優先し親子とも学業との両立の意識が足らない場合は、後悔はさらに深いものになります。中学、高校へ進めば、受験や学校選び等々、もっともっと大事な課題が押し寄せるのですから。
 
話をもとに戻しましょう。今言った、いずれやってくる課題を自分の力でやっつけてもらうために、サッカーをして生きる力をつけてもらう――そうとらえてみませんか?
 
そのように考えられるのであれば、お子さんと話しあった後、まずは意見をまとめてみてください。紙に書いてもいいでしょう。そして、そのお父さんコーチと、チーフコーチも交えて、お母さんとお子さんとふたりで話し合ってみてはいかがでしょうか。
 
ご相談の中に「親としてチーフコーチに確認して、多少は改善されたように思えた」と書かれていたように、すでにチーフコーチは、あなたのお子さんとBチームのお父さんコーチとの関係がこじれていることはご存知ですよね。
 
お子さんに「お母さんと一緒に話をさせて」と言ってもらうのが一番ですが、そこが難しければ、お母さんからチーフコーチに「息子と一緒に話をさせてほしい」と話してみてはいかがでしょうか。
 

■理不尽な要求への対応より、わが子の学びや自立につながる解決方法を目指そう

親として考えるべきは、わが子が試合に出られないことよりも、全員をきちんと試合に出場させてもらうことだと思います。試合に出す出さないを、リフティング技術のみを基準にしていることなど、すでに問題の外のことです。
 
リフティングはひとつのスキル練習。延々ひとりで行う「クローズドスキル」です。本来は、2対1などの対人のオープンスキルを行うほうがメリットはあるのですが、そのように競わせればサッカーが上手くなるとそのコーチは考えているのでしょう。
 
話し合いがうまくいかなかった、もしくは何らかの理由で難しい場合は、ほかの試合に出られない6年生の保護者に働きかけて一緒にコーチたちと話をしてもらう。これが第二段階です。
 
それでもうまくいかない場合は、三つめの段階。
 
この少年団で試合に出ることではなく、サッカーを楽しんで自分の成長につなげ、次の段階を見つめて過ごす。つまり、中学生になってからのことを考えませんか?
 
練習を一生懸命やる。自分で課題を見つける。そもそも、相談文の中に「ズルをした罰則でリフティングのノルマができるまでは試合に出さない」とあるので、ノルマができたら、試合に出られるわけですよね?
 
無論、理不尽な要求です。ですが、そのような価値観の指導者のもとにいる現状、子どもがそこへ向かっていけるのかどうか。そういったことを、親御さんから働きかけてみてください。
 
リフティングで試合に出る出ないが決まるなんて、ばかばかしい。ほかのチームで試合に出たい。コーチと話したけれど、理解してもらえなかった。そうなったら、移籍も含めて検討すればよいでしょう。ただ、もう6年生の夏寸前です。秋になれば、クラブチームでやることも含め、中学生になってからのことを考え始めるわけです。
 
くれぐれも、お子さんの学びや自立につながる解決方法を目指してください。
 
 
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。
最新刊は、ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)。

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