蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
2018年2月 1日
ナショナルトレセンまでもう少しなのに自信がない問題
トレセンに選ばれるくらいなのに自信がなさそうにプレーをするわが子を心配して、色々声かけをしているけれど効果が無い...とご相談をいただきました。仲間とイキイキ楽しそうにプレーをしてほしいという親心は、みなさんも理解できるのではないでしょうか?
自身もサッカー少年少女の母として子育てした経験を持つ、教育・スポーツジャーナリストの島沢優子が、読者の悩みに答える『蹴球子育てのツボ』。今回は、中学以降も子どもが楽しんでサッカーを続けるために親はどうあればいいのか、先輩ママとしてアドバイスを送ります。(文:島沢優子)
<サッカーママからの相談>
息子は小学6年、町クラブのトップチームに所属しています。5年生から県トレセンに選ばれており、現在はナショナルトレセンまであと少しです。
ですが息子は、それで調子にのるでもなく、自信がなさそうにサッカーします。そんな様子にクラブのコーチからは注意を受け、試合で外されることもしばしばです。
いろいろと声かけをしてみましたが効果がありません。
息子はサッカーは好きで中学生になっても続けていきたいと言っています。私としては、小学校最後の年に仲間とイキイキ、サッカーを楽しんでもらいたいです。もっと自信をもってプレーしたらチームも本人も、もっとうまくなるのでは......と思っています。
サッカーを楽しむためには、どのように接していけば良いのでしょうか。
ご回答よろしくお願いいたします。
<島沢さんのアドバイス>
メールありがとうございます。
自信がないのは、理由があります。
ご相談の文章から類推するしかないのですが、もしかしたら息子さんはプレーのレベルをもう一段階上げることを求められ、そこに葛藤を抱えているのかもしれません。
6年生でこれからジュニアユースに上がる直前。しかも、日の丸を背負うような実力がある。であれば、6年生の冬はプレーの質をもう一段ギアチェンジしていく時期でもあります。
単にひとりで相手を抜き去ってゴールを仕留めるといったプレーではなく、流れの中でその都度的確な判断をする。そして、相手の動きによってその判断を寸前で変えられる。そんな高度なスキルや戦術眼を求められる時期であるように思えます。
そこに、本人が心身ともに追い付けずもがいている。そうではありませんか。
■葛藤を抱える子どもに親の声かけは逆効果
自信なさげで弱気なプレーをする子どもに対して、大人は時として厳しく当たってしまいます。「強気で行けよ」とか「攻め気がないならボール持つな」などと突き放すような言葉で奮い立たせようとしがちです。
このような接し方は試合のときなど一瞬効果を発揮する場合もありますが、ずっとその方法のみで通してしまうのは危険です。
コーチが彼を試合で外すなど、多少カンフル剤的な指導をしているのは、期待の表れなのか、単にコーチ自身が腹が立つのかはわかりません。
ナショナルトレセンまでもう少しという実力なのに、自チームの試合で自信なさげにプレーする。そんな息子さんをそばで見ていると、お母さんとしては歯がゆい気持ちにもなりますね。でも、お母さんはサッカーの専門家ではないし、ナショナルトレセンに近づくまでプレーした経験もありません。親御さんが「いろいろと声かけをして」も、かえって逆効果です。
私自身を振り返っても、同様のことがありました。息子や娘についつい不要な声掛けをするたびに「じゃあ、ママがやってみれば!」と常に叱られていました。彼らの意見のほうが道理にかなうため「ごめんなさーい!」と謝るしかありませんでした。
だから、お母さんが何か言いたくなる気持ちもわかりますが、息子さんの胸の内も見えます。もしかしたらお母さんをうっとおしく感じているかもしれません。
「私としては、小学校最後の年に仲間とイキイキ、サッカーを楽しんでもらいたい」
「もっと自信をもってプレーしたらチームも本人も、もっとうまくなるのでは」
これらは本当に親心からだと私には理解できますが、葛藤を抱え自分のプレーに苦しんでいる息子さんからすれば、押し付けのように感じるかもしれません。
よしんば息子さんが小学6年生にしては大人びていて「お母さんは僕のためを思って言ってくれている」と理解していたとしても、それらは苦しんでいる彼にとって重圧になるだけです。