蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
2018年5月30日
サッカーやめたい息子。自分でチームに言わせるべきか問題
3年生になって「サッカー辞めたい」と言い出した息子。宿題が増え、サッカーの練習も長くなったからという。辞めるのは構わないけど、「自分の言葉に責任を持ってもらいたい、どうやって監督やコーチに伝えればいい?」とご相談いただきました。みなさんなら本人から言わせますか?
サッカーママとして先輩の島沢さんが今回もご自身の経験をもとにアドバイス。ちょっぴり恐い「小3問題」とは。子どもが健やかな毎日を送るため、ぜひ参考にしてください(文:島沢優子)
※写真はサカイクキャンプのものです。 質問者及び質問内容とは関係ありません
<サッカーママからの相談>
初めてメールします。子どもは現在小学3年です。
サッカーを始めたきっかけは、「友達がやってるから」の理由でした。小学2年の夏休み後から今日までやっています。
つい先日子どもから「サッカーやめたい。宿題も多いし、今までより練習時間が長い」と言われました。
親からしてみれば「そんなのほかのメンバーも同じだろ」と思っていましたが、サッカーを始めた理由も親の勧めでもなく、自発的だったので、辞めるのも自発的にするのが一番と思い、了解しました。プレー期間は夏休みまで頑張ると本人と約束しました。
そこで質問です。
辞めるなら自分の言葉に責任を持ち、ケジメを覚えてもらいたいのですが監督やコーチには本人から言わせるのがよいでしょうか。
また、このようなタイミングで伝えたらいい、というのがありましたら、アドバイスいただければと思います。
<島沢さんのアドバイス>
メールありがとうございます。
お母さんの子育ての姿勢、とてもいいなと思いました。
いただいたメールに、「サッカーを始めた理由も親の勧めでもなく、自発的だったので、辞めるのも自発的にするのが一番」とありますが、まさしくその通りです。
しかも、お子さんは「宿題が多いのに、練習時間が長くなった」と、生活の変化に対する懸念を辞める理由に挙げているのはとても立派。あっぱれです。「きちんと勉強しなくてはならぬ」という小学生の本分をわきまえているからです。ここに気づく子どもはなかなかいません。
よって、サッカー少年の「小3問題」を読者のみなさんに知っていただくため、ちょっぴり恐い話をします。
■サッカー少年の「小3問題」とは
実は結構の数の少年サッカー家庭が、この問題を深刻に考えずスルーしています。「勉強は大事だよ」のパスをスルーするため、小学校高学年から中学生にかけて徐々に学力の低下を招きます。
そうなってしまうのは、なぜなのか。
それは、この相談者様のお子さんが感じているように、学校の勉強とサッカーがともに「小学3年生」が分岐点になっているから。ここを境目に両方ともハードになるからです。
まず、勉強。
3年生になると、国語と算数に、新しく社会と理科の授業が始まります。ご存知かもしれませんが、新学習指導要領の施行にともなって全体の授業数が増加しますし、内容の難易度もアップします。
特に算数。小学校3~4年生ごろから学習内容がいわゆる抽象的になります。図形問題など見えないものを頭に描いて考えなくてはなりません。ここに割り算などが入ってきます。2年生で習う九九をコンプリートしておかなくてはどんどん複雑になっていく計算問題についていけません。
学校によっても異なるでしょうが、3年生になると算数の授業で先生の話についていけない子どもがクラスの3分の1いると言われています。これまで学校を何度も取材してきましたが、多くの教師や専門家の人たちは、この「小3プロブレム」を否定しませんでした。
相談者様のお子さんのクラスで宿題が多くなったのは、学校の先生がこのプロブレムを少しでも解決しようと家庭学習の負荷を上げているのかもしれません。
一方で、サッカーも3年生になると練習時間が長くなったり、週末の練習試合や参加する大会が増えます。所属するクラブや少年団での活動以外に、サッカースクールに通い始めるのもこの頃です。親子とも何も考えずサッカーにのめり込んでいると、サッカー漬けに拍車がかかってしまう学年なのです。
「だからサッカーをやめましょう」なんて言うつもりは、もちろんありません。そうではなく、勉強との両立に親がコミットするのが3年生からだと申し上げたいのです。
勉強をおろそかにしてはいけません。算数の計算も、国語で習う言葉の理解力も、サッカーがうまくなる、強くなるには必要なインテリジェンスにつながります。
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