蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2018年7月12日

勝利至上から全員出場にチーム方針が変更。息子のモチベ下がっちゃう問題

■子どもを伸ばしたいなら、お子さん自身に決断させましょう

親子の話し合いと同時に、夫婦で「親はどうあるべきか」を議論してみましょう。これが三つめのアドバイスです。

※写真はサカイクキャンプのものです。 質問者及び質問内容とは関係ありません。

例えば、ご相談文にある以下の三つを並べてみましょう。
「親たちは本当にイライラしてしまいます」
「主人は、納得がいかないので移籍を考えています」
「少年団は親の負担が大きくてそれだけでも共働きの私達家族としては大変ですが、いい監督だったから付いてきたのに......。という思いもあり、正直移籍したいです」

ひとつの共通点に気づきませんか?
すべて、主語がご両親です。

サッカーをするのは誰でしょうか?
お子さんですね。

お子さんが決めて、答えを出すべきです。そこを親の意向で誘導してしまうと、新天地でうまくいかなかったとき親を責めます。

ひどくなると、一事が万事自分で決定できず、人のせいにする人間になってしまいます。

だからこそ、子どもの身の上に何かうまくいかないことが起きたとき、親は子どもより数段、冷静でなくてはいけません。

子どもの訴えに対し、例えばこんなふうに対応できます。
「試合の出場時間が減った? そっかあ、物足らないかもね。でも、今までが正解だったかはわからないよ。みんなで出たほうが楽しいよね。力が有り余っているなら、サッカーで遊んで来れば? 遊ぶなかで上手くなるって聞くよ」

そんなふうに、わが子の負の感情に共感しつつも、冷静なアドバイスが望まれます。

共感してもいい。でも、同化してはいけません。同化すると、子どもを客観視できません。
今現在、お父さんも、お母さんも、お子さんの感情に同化しているように見えます。監督が変わって新しいやり方になったことへの戸惑いが、息子さん以上に強く感じられます。そのため、イライラして、納得がいかず、移籍を考えてしまうのです。

本当に伸びる子って、どんな子でしょうか。

例えば同じ状況なら、さっさと自分で移籍先を探してくるか、「よし、全員でうまくなろうぜ。誰が出ても強いチームになろうぜ」と、自分自身と仲間を鼓舞できる子です。そして、そんな子の親御さんは見事に冷静です。決してわが子の感情と同化していません。

息子さん、サッカーの技術は高そうです。順調に伸びるためにも、ぜひご夫婦で話し合ってください。

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。
最新刊は、ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)。
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