蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2018年8月 8日

上の学年へ飛び級していたのに補欠にされ、移籍考えてます問題

■成長するチャンスに気づいていない可能性

お母さん、子どものピンチの多くは「成長するチャンス」です。


そのチャンスに、お母さんは目下のところ、気づいていないのではありませんか?

※写真はU-12ワールドチャレンジ2017のものです。 質問者及び質問内容とは関係ありません。

「私も単純に理由を知りたいと思いコーチに伺ってみた」とありますが、そうしないほうが良かったと思います。聞きたくなる気持ちはわかります。しかしながら、子どものサッカー指導はコーチに任せるべきで、例えばパワハラや体罰など看過できないことが起きているなら別ですが、わが子がレギュラーでない理由について親が口を挟むべきではないと思います。

サッカー少年団やクラブに講演や研修のオファーがありますが、そこで指導者のみなさんから聞く保護者マターの問題はほぼ100%が「過干渉」です。

お母さん自身、過度に干渉している感覚はないと思います。相談文にも「ただ単純に理由を知りたくて」とあります。が、厳しい言い方ですが、子を持つ大人はあまり単純に行動してはいけません。

先に生きてきた大人、さまざまな経験と知見を持つ大人は、熟慮して行動しなくてはいけません。

「このピンチにこの子を成長させるには、自分はどうしたらいいのか」


それを常に考えてください。

そう考えると、親がやることはそんなにたくさんありません。


補欠の理由は子どもが探せばいいことです。移籍先を探す必要もありません。

子どもが自分から「絶対にこうしたい」ともし言ってきたら、その内容がよいものかどうかはコーチやご両親で検討すればいいでしょう。

■この先も子どものピンチを親が救い続けるのか

よって、もうひとつ考えていただきたいのは「ずっと世話を焼き続けるのか?」ということです。

息子さんが「コーチに嫌われていたらずっと試合に出られない」と不安になっているのならば、「嫌いとかそういうわけじゃないと思うよ。自分で何が足らないか考えてみようよ」と物事の道理を伝えてください。

「このままでは試合にも出られず、コーチの評価におびえながらサッカーを続けることになる」という言葉から、常にお子さんをピンチから救おうとするお母さんの姿が垣間見えます。
親の役目は、子どもを「自立」させることです。「救う」ことではありません。

もっといえば、彼の人生は彼のもの。お母さんに、息子さんの人生は生きることはできません。補欠になったピンチも、彼のものです。ピンチから成長する「大事な機会」です。それを奪ってはいけません。

窮地に陥るたびに救うのではなく、「見守る」こと。もうすぐ思春期に入る中学生になってしまいます。これを機に腹をくくりましょう。

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。
最新刊は、ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)。
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