蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
2018年12月19日
部活かクラブか決められない。優柔不断な息子をどうする問題
クラブか中学部活か悩み続ける息子さんの意思決定を促したいパパからご相談いただきました。本人に任せたいが、親から見て優柔不断で意思が弱い部分があるわが子にどう声をかけていいか分からなくなってしまったそう。
お子さんの意思決定を促すために、みなさんどんなことをされていますか?
今回も、スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、悩めるサッカーパパに子どもを自立させるためのアドバイスを送りますのでご参考にしてください。(文:島沢優子)
※写真は少年サッカーのイメージです。ご質問者様とは関係ありません
<<見せしめに怒られる息子。学校で噂になっても移籍したほうがいいのか問題
<サッカーパパからのご相談>
息子は今いるチームではレギュラーメンバーではなく、交代要員で少し出る程度のレベルです。
そして中学生に上がったら部活かクラブかで悩みましたが、中学校にサッカー部があるものの廃部寸前の少人数と聞いていたので、今所属しているクラブチームのセレクションをこの間受けギリギリ合格しました。
でも息子は今もまだ迷っています。
クラブに行けば今の倍の人数になり、かなりの努力をしない限り試合には出れないでしょう。
そのことを踏まえ、部活だって他のスポーツもある事、勉強もしなくてはならない事いろんな選択肢をアドバイスし、あとは本人に「これからどうしたいのか自分の意思で決めてね」と話しました。
そうしたら本人が「そんなに努力出来るか分からない...」「そこまでの強い気持ちがあるかと言われたらそこまででも...」と言うのです。
今までも私が一緒にやろうと言えばやってましたが、自主練を自らやることはそれほどありませんでした。でも今回セレクションに受かったことは素直に嬉しかったし頑張ってみようかな、どうしよう...と。いう感じのようです。
正直私から見ても、サッカーがすごく大好きなようにもあまり見えず、「やってみたら」と進言することも躊躇している状態です。
自分の意志で決めたことを応援しようと思っているのですが、息子は優柔不断で意思の弱い部分があるので、ずっと悩み続けるわが子にさらにどのような声かけしていけばいいのか分からなくなってしまいました。
意思決定を促すには、どのように接したらよいでしょうか。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
廃部寸前の中学サッカー部だけど試合に出られる環境か、試合に出られそうにないクラブチームを選ぶか。
クラブに合格した今でも悩んでいるといるわけですね。
メールを読んで、お父さんの息子さんの子育てに一生懸命取り組んでいる姿が浮かびました。決められない息子さんにじれつつも、心配されているお父さんの心情、ご察しします。兄弟について書かれていませんが、ひとりっ子さんでしょうか。これまで愛情豊かに育てられて来たのだと思います。
私からのアドバイスはたったひとつ。
何も言わないこと。今回は、それを貫いてみませんか。
■意思決定するとき受け身になってないか
お父さんは、こう書かれています。
「自分の意志で決めたことを応援しようと思っているのですが、息子は優柔不断で意思の弱い部分があるので、ずっと悩み続けるわが子にさらにどのような声かけしていけばいいのか分からなくなってしまいました」
そのため、私に「意思決定を促すには、どのように接したらよいか」と尋ねられています。つまり、彼がビシッとひとりで意思決定する「効果的な言葉」を知りたいのでしょう。でも、残念ながら、子育てですべての子どもに効くような魔法の言葉はありません。
まず、息子さんの「優柔不断で意思の弱い部分」が、どこからきているのか、考えてみましょう。
もともとのパーソナリティーもあるかもしれません。ですが、これまでの子育てを振り返ってみると、もしかしたら少しばかりお父さんが構い過ぎたことの影響はないでしょうか。
意思決定を促すために、さまざまな言葉をかけてきた。それが効果的な場合もありますが、そのことで息子さんは「お父さんの導き」を待つようになっているのかもしれません。
「頑張ってみようかな。でも、不安だな、どうしようか――」
そんなふうに言ってたら、そのうちお父さんが「こうすれば?」と決めてくれる。
そんなふうに、本人も無意識に待ってしまう。何か大事なことを決定する際に受け身になっているのかもしれません。
よって、今回の件を、息子さんが「父親離れ」する最初の一歩にしてはいかがでしょうか。
■何も言わない、何も聞かない。親の方から子離れする
まず最初に、親のほうから子離れ宣言してください。
「お父さん"から"は何も言わないことにするね。もう12歳なんだから、自分のことは自分で決めたほうがいいよね。ただ、意見を求めたいときは、いつでもおいでね」
そして、とにかく何も言わない。経過も聞かない。「今、どうなってるんだ?」とか「クラブチームの入会金を払ったらやめられなくなるよ」みたいなアドバイスもしない。
たまに目が合えば「がんばれよ!」と頭をぽんぽんしてあげればいいでしょう。息子さんに興味がなくなったのではなく「見守っているよ」「寄り添っているよ」というサインだけ送ってあげてください。
小学6年生は「前思春期」と呼ばれ、第二次性徴期の前段階。他人と自分との違いや自分自身を明確に認知していくシーズンでもあります。
この時期に「常に親から心配されて導かれる自分」ではなく「自己決定ができ、親もそれを尊重してくれる自立した自分」というイメージがもてることは非常に重要です。
中学2年生くらいから、親の存在を「ウザい」「ほっといてくれ」と感じ始めます。心がゆらゆらと揺らぐ思春期に突入するわけです。そんな時期に、自分に対して後者の自立したイメージや、「自分で何でも決められるんだ。僕は大丈夫」という高い自己肯定感があれば、揺らぎながらも自分で立つことができるはずです。
お父さん自身も、その過程でご自分の趣味を見つけたり、日々の時間を子どもなしでも楽しめる暮らしを確立しませんか。
そして、息子さんの人生は息子さんのもので、転んだり、失敗したりして成長するものだということをもう一度考えてみてください。