蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2019年2月 6日

小1が挨拶できず話も聞けないクラブはおかしいか問題

スクールの体験に行ったら、娘より上の学年なのに挨拶もできない、自己紹介した娘を無視。話しかけても逃げる。子どもたちは練習後の挨拶もせず、コーチの話を聞かず騒いでいた。

小1クラスってこんな感じ? 人間的な面も成長させたいんだけど入部を迷います。というご相談をいただきました。

今回も、スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、お父さんのモヤモヤを解消する5つのポイントをアドバイスします。(文:島沢優子)


※写真はサカイクキャンプです。ご質問者様とは関係ありません

<<あいつにはパス出すな!"選手いじめ"をするコーチ問題

<サッカーパパからのご相談>

今年の4月から小学1年になる娘がいます。

先日とあるサッカークラブの練習に体験で1日参加したのですが、娘は緊張しながらも自己紹介をして近くの女の子に話しかけてました。しかし無視され挨拶もしてくれませんでした。

それでも仲良くなりたく一生懸命話しかけたりしてましたが、チームの子たちは走って逃げたり隠れたりしていました。みんなに逃げられ、普段は元気で明るい娘が泣いていました。怒られたり転んだりした時しか泣かないので、私としても凄く驚きました。

体験サッカーの時は元気にボールを蹴っていたので、サッカー自体は楽しいみたいです。
自分もサッカー経験者なのですが、挨拶など技術以外の事もたくさん学びました。それで娘の成長につながると思いサッカークラブに入れようと思いました。

子ども達はずっと騒いでいて、練習後の挨拶も特にしていませんでした。しまいにはコーチが「今日頑張った人~」と聞いたら娘以外ほとんど手をあげませんでした。

娘より一つ上の子ども達が、挨拶もできないコーチの話もちゃんと聞かないのは問題だと感じました......。

サッカーを通して人間的な面も成長させたいと思っているのですが、正直このクラブに入部させるか悩んでいます。

低学年の頃はこのような感じなのでしょうか?

<島沢さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

初めての集団に溶け込もうと娘さんは必死に話しかけたりしたのに、なかなか相手にしてもらえなかった。その様子をみていたお父さんが深く傷ついた様子が伝わってきます。

そのうえ、娘さんよりひとつ上の小学1年生の子どもたちが、挨拶もできない、コーチの話もちゃんと聞かない。そのことにもショックを受けられたようです。

最後に低学年の頃はこのような感じなのか? と尋ねているところをみると、お父さんにとって最初のお子さんでしょうか。

最初の子どもさんであれば、親にとってすべてが未知の世界。これから大冒険の始まりです。特に、親御さんの子ども時代とは、環境がまったく違うため、戸惑うことは多いことでしょう。

まずはお父さんのモヤモヤを解決しましょう。

■普段と違うことに対する「舞い上がり」だった可能性も。娘さんのため五つのポイントをチェック

「挨拶もできない、コーチの話もちゃんと聞かないのは問題」とあります。娘さんはそうではないようなので、比べてしまうのかもしれません。もしかしたらお父さんもきちんとされたお子さんだったのでしょう。

ただ、たった一度の子どもたちの姿だけで判断するのは時期尚早かもしれません。子どもにとって「恒常性」は大きな要素だと言われています。いつもの仲間、いつもの先生、いつものおいしい食事。

ところが、娘さんが体験に来た日は、小学1年生の子どもたちにとって新しいお友達が現われた。子どもというのはちょっとしたことで舞い上がったり、落着きを失ってしまうもの。私は体験に来た親子の前で「挨拶しろ!」とか「話を聞け」などと怒鳴らないコーチのほうが、むしろ好ましい気がします。

よろしければ、このあと、以下の五つのステップを試してみてください。

1.このクラブの上の学年の練習や試合も見に行く。そうすれば、このクラブに通わせたらどんなふうに育つのか。ひとつのアウトルック(見通し)になるはず。

2.コーチに、どんな方針で選手育成を考えているのかを尋ねる。

3.小学生の間はスポーツは楽しむことが一番。勝利よりも、みんなで楽しめる工夫をしているクラブなのかどうかを確かめる。

4.何よりも必要なのは、子どもがそこでサッカーをしたいかどうか。体験が一度だけしかできないのなら、もう一度試合などを見学に行ってみる。

5.他のクラブも行ってみる。二つか三つくらい、行ってみて、さまざまな面を比較してみる。

■娘さんができることが、他の子はまだできないことも...... 子どもの「成長速度の違い」


ところで、これが中学生だとしても、ところによっては挨拶もできないし、話も聞けません。私自身、人の話を聞けない子どもでした。常に空想の世界に浸っており、自分が興味のあることは話しも聞くし熱心にやりますが、そうでなければまったく聞かない、やらない。そんな子でした。

そんな人間がアドバイスするのもおこがましいのですが、ここはお父さんに「ダイバーシティ(多様性)」という言葉をプレゼントしますね。

ご存知の通り、人それぞれ個性がありさまざまなのが、互いに受容し認め合うこと。それがダイバーシティですね。

特に、子どもはそれぞれ成長の速度が異なります。早くから大人のようにきちんと挨拶をし、質問に答え、その場でどうすればよいのか(大人が満足するのか)、空気を読める子どももいれば、そういった認知力の育ちが遅い子どももいます。

中、高校生にもなれば、じわじわと差は縮み、それなりにみんな大人になって成人式を迎えるわけです。

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