蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
2019年3月22日
敗戦後に「ざまあみろ」と言ったコーチに預けていいのか問題
■今は気づいていなくても、二つの価値観の中で苦しむ可能性
これは、いま問題になっている「体罰」と似ています。
どこからどこまでが体罰なの? 軽いものはOKなの? 重くなるとダメだよね......。
これと、コーチによる選手への理不尽な扱いは同じです。練習中の暴言はOK? でも、SNSの書き込みや「ざまあみろ」はいくらなんでも......。
結局、少しでも許してはいけないのです。
少年サッカーに、理不尽は必要ありません。理不尽を見極める力こそが必要であって、それに耐えることを「学び」にするのはおかしい。試合に出続けていても、理不尽な状況に目をつぶらないでほしいと私は思います。
特に、大人の矛盾を受け流すことの難しい純粋な子どもは、自分では気づいていなくても、二つの価値観のなかで苦しむことになります。
もしかしたら、息子さんの態度や言動になんか心配な点があるのではないでしょうか? 純粋にサッカーを楽しんで帰ってきているのなら、よいのですが......。
中学生以降は、ぜひ以下のことを考えてみてください。
1.保護者は、わが子がコーチに目をかけられているとか、評価されていないのではないかといったことにとらわれないこと。
2.ダブルバインドにならないよう、子どもと価値観を共有する。楽しくサッカーができているか、前向きに取り組めているかを本人に尋ねてあげること。
3.サッカーをしてどうなりたいのか。そのためにどんな環境でやりたいのか。本人と話し合う。
読者の皆様にはこのご相談から、少年サッカーの試合に出る、出ないの問題や、親の性(さが)を考えていただければと思います。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。
最新刊は『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。