蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2022年2月 9日

自分は下手だからと卑屈になってモチベが落ちないか心配です問題

■「試合に出さないなら辞めさせます」親が立腹して子どもの意思を無視するケースも


(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

以前、都内で少年サッカーのコーチをしている方が、こんな事例を教えてくれました。

4年生が大会に出たら、相手が強くて、二人だけ試合に出せなかったそうです。すると、その日当番だったその子のお母さんが「試合に出ないのなら当番なんかしないほうがよかった。もうやめさせます」と言ってきたそうです。

コーチは陳謝し、その子にも「今度はチャンスがあるから」と説得したら、子どものほうはうなずいたそうです。入ってまだ数か月でしたが、サッカーを好きになっていました。ところが、お母さんは聞き入れません。「みんな出られると言われたから入れたのに」と言って、息子さんの手を引っ張って帰ってしまいました。

「子どものほうはやめたくなかったと思う。歯を食いしばって泣くのを我慢していました。でも、母親にやめたくないと言えないわけです」

歯を食いしばっているのを、お母さんは「ほら、この子もこんなに悔しがっている」と言ったそうです。

親が子どもをコントロールできると考えないほうがいいです。声掛けとか、何か話をしてやる気が出るものではありません。日ごろから、できるだけ子どもの選択を尊重して任せましょう。

「ま、いっか。サッカーをするのは私じゃない。この子なんだし」

そのようにぜひ割り切ってください。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。
最新刊は『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
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