子どもがみるみる伸びる フィンランド式キッズスキル
2013年12月16日
性格を言い訳にしない!キッズスキル実践のための15のステップ
自分で考えて行動する子どもを育てるためのメソッド、フィンランド式キッズスキルをご紹介する連載の第二弾は「子どもが自分で考える」「成長する」ための具体的な方法を順を追ってご紹介します。
■段階を踏めば誰にでもできる! 自立を促すフィンランド式成長法
キッズスキルの素晴らしいところは、しつけや問題解決の方法が、誰にでもできるように段階を踏んだ手順が示されているところです。「私たちの子どもだから」「この子はこういう性格だから」と諦める必要がありません。親やコーチが、子育ての才能、サッカーを教える才能を身につけていなくても、技術で子どもたちを育んでいけるのがキッズスキルの最大のメリットです。
開発者のベン・ファーマン先生が示すのは、次の15のステップです。
ステップ1 問題をスキルに変換するステップ2 学習するスキルを決めるステップ3 スキルを学ぶことの利点を探るステップ4 スキルに名前をつけるステップ5 味方になってくれるヒーローを選ぶステップ6 サポーターを募るステップ7 自信をつけるステップ8 お祝い会を企画するステップ9 スキルを明確にするステップ10 学んでいるスキルを公表するステップ11 スキルを練習するステップ12 リマインダーを作るステップ13 お祝い会を開くステップ14 スキルを他の人に伝えるステップ15 新しいスキルを決める
少し多いと感じるかもしれませんが、この通りにやっていけば、問題志向から解決志向へ、子どもたちが自分から進んで問題を解決する成長ぶりを見せてくれるようになります。
今回は、15のステップをいくつかのタームに分けてご紹介していきます。各項目について説明してくれるのは、日本で唯一フィンランド式キッズスキルを広めるプログラムを提供しているランスタッド株式会社EAP総研の川西由美子所長と、山越薫さんです。
「せっかくですから、子どもたちのサッカーで起きそうなことを題材に15のステップを紹介していきましょう」
アスリートのコンサルティングも多く手がける川西さんは「自分の身の回りで実際に起きそうなことで学んでいくのが一番の近道」だと言います。
まずはキッズスキルで最も重要なポイントとなるステップ1をサッカーキッズを持つお母さんからよく聞かれる問題を例にとりながら見ていきましょう。
サッカーを始めたばかりの子どもがいます。サッカー自体は好きなようなのですがいざグラウンドに行ってみると、すぐに飽きてしまい、別のことをやりたがります。また、思い通りにプレーができないと、怒ったような態度を取ってしまいます。子どもが集中できないのは仕方ないのはわかっているけど……。周りのお母さんたちに呆れられている気もするし、恥ずかしいし……。
さて、困りましたね。子どものやる気や集中力は、子ども自身でもなかなかコントロールするのが難しいものです。フィンランド式キッズスキルを使えば、子どもたちが「自分から」率先して問題を解決しようと努力するようになるそうです。
では、どうやって子どもに集中力をつけていくのか。キッズスキルのステップに沿いながら、見ていきましょう。ステップ1の「問題をスキルに変換する」を実行するためには、お父さん、お母さんのサポートが不可欠です。
■その悩み、子どもの悩みですか? あなたの悩みですか? まずは親が問題を把握する
「ステップ1の中にも大きく分けてふたつの段階があります」
川西さんが言います。
「子どもは自分の行動が問題だとは思っていません。飽きてしまうことや、イライラを表に出すことが悪いことだとも思っていません。保護者の方に気をつけていただきたいのですが、ここで問題を自覚させようと『集中しなさい』とか『イライラするのをやめなさい』といった子どもの行動を責めるようなことを言ってはいけません」
問題を指摘して~~ないと非定型でしかることはNG。これはキッズスキルの大原則でしたね。では、どうしたらいいのか?
「子どもにとっての問題を親が観察してあげることから始めてください」
川西さんは、親の都合で問題を指摘するのではなく、子どもにとっての問題を見つけることが先決だと言います。
「この場合、お母さんにとっては『サッカーの練習が続かないこと』が問題です。でも子どもの立場になってみたらどうでしょう?」
練習が続かないと困る理由、すぐに飽きてしまうと困る理由、みんなと同じことをしないでふてくされてしまうと困る理由は、それぞれ違うのかもしれません。サッカーの技術が足りない、ボールがうまく蹴れない、チームメイトと仲良くできない……。子どもにとっての問題はサッカーの練習が続かない原因にあるのかもしれません。つまり、子どもにとっては、サッカーの練習が続かないと、サッカーの技術が身につかなくて困ってしまうということにつながるかもしれませんし、チームメイトと仲良くできないことが辛いのかもしれません。子どもにとっての問題に気づいてあげることが大切です。そして、親が気づいた子どもの問題について、その事を子ども自身も問題視しているかどうかを話し合うことが大切です。
そのためにも、川西さんは「お母さんやお父さんもサッカーグラウンドに足を運んで、子どもの心の動きも含めたプレーを見ることが大切ですね」と語ります。
「親は、子どもを注意深く見守りながら、少しの変化も見逃さず観察すること。子どもがやりづらそうにしているとき、ぎこちない動きのとき、楽しくなさそうなときを見逃さず、子どもが何に困っているのか、その気持ちや問題を把握することが何よりも大切」だと川西さんは続けます。
■問題に対応するスキルを探す
問題を把握したら次はいよいよこの問題を解決する“スキル”を探します。「いけないことをやめる」という発想は捨てて「正しいことをする」ためのスキル探しを子どもと一緒にになって始めるのです。これまでご紹介した方法で感じ取り、子どもと一緒に話し合った、本人が気にしている問題について、今後“どうなりたいか”を聞いてあげることです。不安や心配、たとえば足が痛くてサッカーのプレーが上手にできない子には、その不安を共有してあげた上で、どうしたいのか聞いてあげることから始めてください」
もっと上手にボールが蹴れるようになりたい! リフティングができるようになりたい! ドリブルのフェイント技ができるようになりたい!
サッカーに飽きてしまう原因は、実はサッカーそのものの“スキル”不足だったということも少なくありません。「練習に飽きないスキル=集中力が持続するスキル」を一生懸命探すよりも、「サッカーがうまくなるスキル」習得する方が、練習に向かう気持ちが強くなるはずです。
直接的なサッカーの技術ではなくても、好き嫌いなくご飯を食べることや、早起きすること、朝ご飯をしっかり食べることなど、どんなことでも「サッカーの練習に飽きないための」スキルになり得ます。
ステップ2の「学習するスキルを決める」段階で気をつけてほしいのは、親が一方的に「途中で飽きるのをやめさせる」という視点で考えないことです。「サッカーが楽しい」→「もっとやりたい」という思考に子どもを導くことで、子どもは自分からサッカーに熱中して、集中力も高まってきます。キッズスキルアンバサダーの山越さんは「親子で一緒に話し合いながらスキルを決めること。最終的には子ども自身が達成可能で『やりたい!』と思ったスキルを設定すること」がポイントだと言います。
「スキルを身に付け、それを磨くことによって「サッカーが上手になる」というのは子どもにとってもうれしい出来事でしょう。そうなれば自ずとステップ3の「スキルを学ぶことの利点を探る」もクリアできてしまいます。もともと子どもが抱えていたかもしれない悩みとして、練習に集中できるようになると、チームメイトとも真剣に練習するので、仲よくいられるという利点もでてくるかもしれません。
今回はステップ1~3をご紹介しました。川西さんも山越さんもこの段階こそが「キッズスキルの特徴であり、一番大切なこと」だと声を揃えます。問題をスキルに変換するというスイッチを入れるには、保護者の方が、これまでの子育てやしつけ、サッカーへの取り組みに対する考え方を大きく方向転換することになるのかもしれません。
ステップ1~3は、キッズスキルのエッセンスが詰まった大切なセクションなので、時間を割いて説明しました。次回は、ステップ4~11。スキルをより深めて行く子どもたちをサポートする方法について教えていただきます。
川西由美子
キッズスキルアンバサダー、リチーミングコーチ。フィンランド式キッズスキルを広める日本で唯一のトレーニング機関であるランスタッド株式会社EAP総研の所長を務める。自身も数多くのアスリート、企業所属のスポーツチームをサポートした経験を持つ。
山越薫
キッズスキルアンバサダー、リチーミングコーチ、医療コンシュルジュ、メディカルアシスタントとして基礎心理学の分野からキッズスキルにアプローチする。EAP総研Behavioral Healthコンサルタント。
ベン・ファーマン
フィンランドの精神科医。ヘルシンキ・ブリーフセラピー・インスティテュート(フィンランドが国家レベルで認定しているサイコセラピスト=精神療法家のトレーニング機関)代表。キッズスキルの著者であり、キッズスキルプログラムの開発者。同じく開発に携わった問題解決、チーム再構築プログラム「リチーミング」は多くの世界的企業で研修や人材育成に活用されている。
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