サッカーIQが高まる言葉 ―格言からサッカーの真理・本質を読み解く―
2019年3月19日
第三回 「理想論は誰にでも語れるが、選手にやらせるのは簡単ではない」
言葉は時として、「何を言ったか」より「誰が言ったか」の方が影響が大きくなります。同じ内容の事を言っているのに、自分が特に関心のない人がいえば「ふーん」で終わらせてしまうけれど、有名な人がいえば深い意味が隠されているように感じることがあるもの。
しかし、有名人が発したからと言って「正しい」と鵜吞みにしてしまっては、サッカーIQは高まりません。表面的で間違った解釈をしないためにも、「何を言ったか」に注目することが大事なのです。
技術習得の練習だけでは良い選手になれません。深い思考力など内面も磨いてこそ選手として伸びていくのです。
西部謙司さんの「ボールは丸い。 サッカーの真理がわかる名言集」より、みなさんに伝えたい珠玉の名言をピックアップしてご紹介します。西部さんの註釈を読んで、サッカーというスポーツの奥深さを味わってください。
第三回目は、元日本代表監督のイビチャ・オシムさんとサッカー解説者セルジオ・越後さんによるサッカーへの理解に関連する言葉をお送りします。
■実際選手たちにやらせるのは難しい
ロジックな理想論は誰にでも語れる。
でも実際に選手たちにやらせるのは、
簡単なことではないんだよ。
―イビチャ・オシム
ロジック(論理)は頭で理解するもの。理解には主に言語を使う。これが選手にとってロジックを吸収するうえで障害になっていると思う。
サッカーのプレーは、いちいち言語を使って行われていない。言語的な理解をプレーに反映させることもないわけではないが、目視したものから瞬間的な判断を行うことがメインになる。
自動車の運転と似ていて、初心者でなければ、いちいち言語を使った判断はほとんどしていない。逆にいえば、ロジックが習慣的に体に染みついていないと使えない。
「実際に選手たちにやらせる」のが簡単でないのは、ロジックを言語的に意識しないレベルまで習慣化するまでに時間がかかるからだろう。
馴染みのないロジックをそのレベルまで落とし込むのは、選手によっては不可能に近いかもしれない。
■小学生の時に全部覚える必要はない
サッカーにはひらがながあって、カタカナがあって、漢字がある。
小学校の時には、漢字を全部覚えなくてもいいんだよ。
小学生らしくサッカーをすればいい。
遅れてないんだから。
高校に入ってから漢字を覚えればいい。
―セルジオ越後
小学生でも漢字を全部覚えたほうが有利だから、全部教えようとする。そうすると、何か肝心なことが抜けてしまう。そして、それは後から補おうとしてもできなかったりする。
サッカーに子供も大人もないが、子供と大人が同じでないのは自明である。
子供に大人と同じことを期待するほうがおかしいわけで、つまり子供の指導者はすべて忍耐力が必要になるわけだ。プレーするのは子供、監督は大人。大人の考えに子供を合わせるのは無理がある。
もし、監督が大人の頭でしか考えられないなら、いっそ監督も子供にしてみたほうがいいのではないか。