サッカーIQが高まる言葉 ―格言からサッカーの真理・本質を読み解く―
2019年3月29日
第五回 ヨハン・クライフの言葉に見る「サッカーを楽しむ」ということ
言葉は時として、「何を言ったか」より「誰が言ったか」の方が影響が大きくなります。同じ内容の事を言っているのに、自分が特に関心のない人がいえば「ふーん」で終わらせてしまうけれど、有名な人がいえば深い意味が隠されているように感じることがあるもの。
しかし、有名人が発したからと言って「正しい」と鵜吞みにしてしまっては、サッカーIQは高まりません。表面的で間違った解釈をしないためにも、「何を言ったか」に注目することが大事なのです。
技術習得の練習だけでは良い選手になれません。深い思考力など内面も磨いてこそ選手として伸びていくのです。
西部謙司さんの「ボールは丸い。 サッカーの真理がわかる名言集」より、みなさんに伝えたい珠玉の名言をピックアップしてご紹介します。西部さんの註釈を読んで、サッカーというスポーツの奥深さを味わってください。
最終回となる第五回目は、元オランダ代表でFCバルセロナの哲学の礎を作った ヨハン・クライフ。サッカーを楽しむこと、そこから学ぶこととは何か。みなさんも考えてみてください。
■子どもと大人のフットボールは違うものなのか
子供が外でプレーするときに心配なんかしていないよね。
プロ選手も同じであるべきだ。
―ヨハン・クライフ
クライフは「コーチはいても、もはやティーチャーはいなくなった。だからプレーそのものから学ばなくてはならない」とも話している。彼の言う「ティーチャー」をそのままの意味にとれば教えを説く人だ。クライフにとってフットボールは喜びで、「ボールをコントロールし、それに親しみ、攻撃を試み、ゴールしようとする」ことだ。「もちろん守備もフットボールの一部だけれども、守備といってもいろいろなやり方はあるからね」。
いろいろな守備の1つは、もちろん守備をしないことである。相手に攻撃させなければ守備をする必要がない。攻撃は最大の防御だ。
フットボールは子どもも大人も同じ、だったらプロだって楽しむのが当たり前じゃないか、楽しくプレーすること、ボールとともにあること、そこから学ぶこと......現役時代のピリピリした表情のヨハン・クライフが同じように考えていたかどうかはわからない。ただ、クライフがキャプテンだった1974年ワールドカップのオランダ代表チームは、試合中にもよく笑っていた。
こうしたアプローチとは反対に「フットボールは戦い」であり、「楽しめるのはマラドーナだけ(クライフでもメッシでも可)」というのもある。ただ、それは基本的にプロだけのアプローチだろう。子どもと大人のフットボールが違うことになる。では、どちらが本物のフットボールなのだろうか。
クライフの立場をとれば、子どもと同じでないならそちらが偽物になる。それを教える人がいなくなった、ということだろうか。