JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問
2016年9月30日
熱心に指導することを勘違いしている!サッカーを楽しむために白岡市サッカー協会が取り組むこと
前回につづき、日本サッカー協会グラスルーツ推進部の松田薫二部長が、埼玉県は白岡市サッカー協会会長の秋月さんにお話を伺いました。話の内容は補欠ゼロから少子高齢化、サッカーの楽しさにまで展開。地域で起こっている問題、少年サッカー事情の一端も見えてきました。(取材・文 大塚一樹)
■補欠ゼロの市協会主催の大会を実現したい!変化する環境の中で
松田「みんなPlayの部分はどうですか? 補欠ゼロとなるように、グラスルーツ推進では勝利至上主義ではなく、レベルに応じてみんなが試合に出られる環境づくりを啓発しています」
秋月「正直に言えばまだそこには手を付けられていません。少子化でこの地域のサッカーの在り方も少しずつ変わってきているんです。去年まで白岡市の4種は、ボランティアコーチが指導し所属する子どもたちの親がお手伝いして運営する、いわゆるスポーツ少年団がメインになっていました。それが今年になって少年団が減り、ひとつだけです。プロのサッカーコーチが運営するような、いわゆるクラブチームは4つあります。少年団はサッカー協会の管轄外ということもありますが、そういうのもみんな一緒にできるといいんですけどね」
松田「少年団の数が減ったというのは?」
秋月「少子化ですよね。団地造成で宅地や家はあるけど高齢化が進んでいます。子育て世代は実家から東京のほうに出るケースが多いんです。子どもの数は本当に減りましたよ。もう一つは忙しいお父さんお母さんがお手伝いに時間を割けなくなって、クラブチームに入れたいという希望が増えたことでしょうか。最大で8チームあったスポーツ少年団がいまは1チームになりましたから」
松田「試合環境はどうなんですか?」
秋月「4種は8人制で埼玉県の東部地区中ブロックとしてリーグ戦を行っています。リーグ戦でもみんなが試合に出て、『サッカーを楽しんでくれ』というのが私の本心ですが、まだ全体に向けてそういうアクションを起こすチャンスはありませんね」
松田「一番楽しいのは試合だと思うので、試合環境は大切ですよね」
秋月「リーグ戦の他にみんなが楽しめる、全員が出られる試合があればいい。補欠ゼロを掲げた協会の冠大会をやりたいです」
松田「それはぜひ実現してほしいですね」
■楽しくなければサッカーじゃない
秋月「勝利至上主義というか、補欠を生む土壌の根底にあるのは、熱心に指導する、子どもたちががんばるってことをみんな誤解していることだと思うんですよ。違うんだよね。サッカーっていうのは楽しみだからね。楽しむために練習をしてうまくなる」
松田「うまくなりたいからがんばるんですもんね」
秋月「監督が『何ぼやぼやしているんだ』と怒鳴ったりするのは間違いですよ。それでは楽しくないですよね。子どもたちも『ミスしたら怒られるからボールがこない方がいい』と思ってしまいます。優秀な選手ばかりが楽しむのがサッカーじゃありませんよね。優秀な選手なんて10年に1人いるかいないかです。じゃあその他の選手はどうするんだとなる。誰のためのサッカーなのかということは大切だと思います。
松田「楽しくなければ優秀な選手もやめてしまいますからね」
秋月「そうなんです。楽しませるサッカーがメインじゃないと10年に1人の選手も生まれないんです。だから白岡市サッカー協会のスローガンは『サッカー楽しい!』なんですよ。大会とか、集まる機会があるとみんなで叫ぶんです。『サッカー楽しい!』って」松田部長「子どもたちも一緒に叫ぶんですね」
秋月「この前、ある大会で今日はいいかなあと思ってスローガンを言わなかったんですね。そうしたら子どもたちの方から『今日は言わないんですか?』って言ってくれて、結局みんなで『サッカー楽しい!』って叫んで締めくくったんです。そういう風に浸透してくれると嬉しいなと思っているんです」
松田「サッカーが楽しいとか好きとかいう気持ちは、グラスルーツにとってとても大切なことですよね。それが一番大切かもしれません」
秋月「そこを基本に考えていけば問題は起きないと思うんです。良い選手を育てることも重要ですが、私はそこが協会のメインの仕事ではないと思っているんです。無理に意識付けをしなくても実際、サッカーって楽しいじゃないですか。私は有名な選手がプレーしているのを見るより、地元の子どもたちのサッカーを観ている方が楽しいんです。
松田「レベルが高いから面白いとかじゃなくて、サッカー自体が楽しい、面白いんでしょうね」
秋月さん「日本代表にしたって、点を取られるときは中学生がやるようなポカをやるわけです。こんなことを言ったら失礼なのかもしれませんけど、サッカーの本質自体はあまり変わらない。だからどのレベルのサッカーも面白いんです」
■できるだけ早く土台をつくって次世代にバトンを渡したい
松田「秋月さんが協会としてこういう活動に熱意を持たれているのもサッカーが楽しいからというわけですね」
秋月「そうなんですけど、じつは私は早く引退したいんですよ(笑)。会長になって、規約を見ると白岡市全体のサッカーを統括するとかそんなようなことが書いてあって、だからやらなきゃいけないんだと全体になるべく統一感を持ってできるようにしようと思ったんです。でも、もう75ですからね。土台を作ってできるだけ早く次の世代に席を譲りたいと思っています」
松田「まだお元気ですから頑張っていただいて。こういう協会の活動を広く知ってもらうことも推進部の役割のひとつだと思っているんです。これからも白岡市サッカー協会の活動に注目しています」
■松田部長の感想
秋月さんが実現させようと取り組まれていることのベースにあるのは、サッカーが楽しいということでした。子どもたちが何のためにがんばるのか?と言えば、サッカーが楽しいから、もっとうまくなりたいと思うからだというのは本当ですよね。楽しくなければ練習もしないし、辞めてしまう。秋月さんの情熱が地域に、そしてグラスルーツ推進・賛同パートナー制度を通じて全国に広がっていって欲しいと強く思いました。
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