JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問
2017年7月25日
親子三代でプレーするイベントも! 「引退なし」を掲げる総合型クラブの理想は「卒業のない学校」
前編では、NPO法人浦和スポーツクラブが、サッカーを続けたい子どもが集まれる場所として「サッカー広場」を展開していることをお伝えしました。そこでは、チーム活動をしていないのでレギュラーも補欠もなく、だれでもサッカーを楽しむことができます。
NPO法人浦和スポーツクラブでは「補欠ゼロ」以外に、「引退なし」「障がい者サッカー」といったテーマについても積極的な活動を行っています。後編では、それらの取り組みと、総合型スポーツクラブとしての今後の展望について、日本サッカー協会(JFA)グラスルーツ推進部の松田薫二部長が話を伺っていきます。(取材・文:杜乃伍真)
<今回訪問した浦和スポーツクラブは以下の賛同パートナーです>
■大人のサッカー広場も大盛況
NPO法人浦和スポーツクラブでは駒場スタジアムのサブグラウンドで週一回、子どもたちのための「サッカー広場」のほかにも、60歳以上の方々が参加できる「スーパーシニア」というコースなども用意しており、これが好評のようです。
「10年ほど前に県内で60歳以上のシニアリーグが始まったことを受けて、『平日も練習したい』というシニアの方々がたくさんいらっしゃったんです。当時このグラウンドは平日の13時から15時は誰も使っていなかったので、じゃあ大人のサッカー広場もやりましょうか、という話になり、コンスタントに30~40人は集まるようになりました。平日の午後一番の時間帯なのに、出席率は一番いいんですよ」
小野崎さんがそこまで話すと、クラブのパンフレットに目をやった松田部長が「最高齢は83歳、これはすごいですねえ」と感嘆の声をあげました。小野崎さんが柔らかい表情になってこう続けます。
「年に一回か二回、夏休みなどに親子三世代のサッカーもやるんですよ。シニアの方は62、63歳くらいならばここでは若造になってしまいますね。皆さんシャキッとされていて健康に留意されているし、ウォーミングアップもしっかりされます。皆さん口を揃えて、『サッカーをずっと続けたいからだよ』と言われるんです。僕なんかそれを聞いて反省しきりです(笑)」
浦和スポーツクラブでは「引退」を一切考える必要はなく、孫の世代と一緒にプレーする機会もあるほどなのです。
■中学でサッカーを続けたい女子選手の受け皿にも
また、「障がい者サッカー」については、「サッカー広場」や「ユース」でコーチを務めていた埼玉大学の学生が、ブラインドサッカーを研究テーマに取り上げてから交流が深まるようになったそうです。小野崎さんが「まだクラブ独自の取り組みには発展していませんが」と前置きした上でこう話します。
「ブラインドサッカーとの交流はありますし、最近ではCPサッカー(脳性まひ者7人制サッカー)で活動されている方がよく声をかけてくださるので、僕がクラブ内の人間に声をかけて、練習会に一緒に参加させてもらっているような段階ですね。もうちょっと交流する機会を増やしていきたいなと思っているところです」
「障がい者サッカー」への取り組みはこれからだという小野崎さん。これからの取り組みということでいえば、最近になって、サッカーに励む女子中学生へのサポートも始めたといいます。
「あの選手たちは……」
ふと、松田部長がグラウンドの遠くを捉えて視線を向けた先には、数名の女子たちがボールを蹴って興じていました。
「あの子たちは中学生で、最近始めた中学生女子のコースに通っている子たちですね。この辺りの少年団では女子のセンターフォワードもいるくらいで女子サッカーも盛んなんです。ただ、中学生年代のクラブチームは浦和レッズレディースの他に市内に3つありますが、誰でもがクラブチームで続けられるわけではありません。市内の中学校で女子サッカーがあるのは1校だけです。身近な部活で続けられないんです。僕たちもその環境は絶対に必要だと思っていたので、彼女たちをサポートしようと思って始めてみました。まだまだ人数が少ないので根気強く続けていければいいなと思っています」
浦和スポーツクラブでは、子どもが、お年寄りが、女子が、老若男女問わず、サッカーに限らず様々な種目を楽しめる日々のサイクルがあります。そして、それらの活動は、駒場スタジアムのサブグラウンドのみならず、近隣の学校の校庭や市内のグラウンドなど、浦和一帯で展開されており、総合型スポーツクラブとしての機能を果たしています。
■「卒業のない学校」のような場所
松田部長が「今後のクラブの夢はなんですか?」と問うと、小野崎さんは間髪入れずに「やっぱりグラウンドがほしいですね」といい、こう続けました。
「河川敷まで行けば貸してくれるところもありますが、子どもたちは通えません。もっと自由に使えるグラウンドの数が必要だし、だからこそ、学校ともっとうまくやっていければいいと思っています。地域の子どもたちの見守りやお年寄りの健康づくりを地域でどう進めていけばよいかを今後地域はどう見ていけばいいのか、という課題解決の糸口になるかもしれません。これからは地域にある学校の存在がより大事になると思っていて、『卒業のない学校』のようなものができればいいと思っています。中学や高校を卒業しても、毎週ある決まった時間にそこへ行けば、サッカーに限らず、好きなことができる。地域の人なら誰が来てもいいよ、という場所ならば誰もが入っていきやすいのでは。学校も地域の人たちもともに使う施設として、どんどん充実させていけばいいのではないでしょうか」
地域の人たちの誰もが幼少期に通った自分の学校に戻り、そこで生涯にわたってスポーツなど自分が好きなことを楽しむ――。小野崎さんは「そういう人たちがもっと増えたら」と願いを語りました。
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