JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問
2017年10月19日
身長や上手さに関係なくチャンスを平等に。「補欠ゼロ」実現のためにクラブを立ち上げた指導者
グラスルーツ賛同パートナー制度が始まった当初、すぐさま「うちのクラブは創設から、グラスルーツ宣言と同じ活動をしています」と、早速名乗り出てくれたクラブがあります。それが今回訪問した、見附小学校サッカークラブです。(取材・文・写真:鈴木智之)
■「補欠ゼロ」実現を実現するためにクラブ創設
もともと、クラブ誕生のきっかけがグラスルーツ宣言のテーマでもある「みんなPlay!」でした。クラブの代表を務める、大塚純一さんは言います。
「見附市内にはいくつかのサッカークラブがあるのですが、練習についていけない、試合に出られないといった子が増えたことがありました。そこで『レベルを問わず、誰でも楽しめるクラブを作ろう』ということから、2000年に見附小学校のサッカークラブとしてスタートしました」
松田部長は「それがグラスルーツの原点なのですね。賛同パートナーに申請していただいてから、すぐに『補欠ゼロ(みんなPlay!)』の大会を開いていましたよね。レポートを読ませていただいて、すごくうれしかったんですよ」と感謝を口にします。
「もともと、クラブの成り立ちが『みんなPlay!』なので、大会は定期的に開催しています。近隣クラブのコーチからは『普段の大会は勝たなければいけないので、全員を試合に出すことは難しいのですが、この大会のおかげで全員を試合に出すことができます』と感謝の言葉をかけられたこともあります」
松田部長はその話を聞いて「クラブによって事情は様々だとは思いますが、できることならどんな大会であれ、会場に連れて行った子どもたちは、少しでもいいので試合に出してあげて欲しいですよね」と言います。
■試合経験は自信に。子どもたちの可能性をつぶさないための理念
大塚監督はその言葉に大きくうなずき、次のようなエピソードを教えてくれました。
「『みんなPlay!』の理念を実行すると、たくさんの保護者から喜んでもらえます。他のクラブに行くと、試合にも出られないし、点も取ることができない。保護者の方は、自分の子どもが点をとって喜ぶ姿を見られてうれしいし、本人も自信になる。その経験は外では絶対にできない。このクラブに入ってよかったと言われるんです」
松田部長はその話を聞いて「それがサッカーの原点ですよね」とうれしそうに目を細め、こう訊ねます。「なぜ、全員を試合に出すようにしようと思ったのですか?」
大塚さんは言います。
「試合に出られないことが原因で、サッカーから離れてしまう子どもを作りたくなかったんです。たとえ上手ではなくても、サッカーを続けていれば、審判や指導者、クラブスタッフなど、サッカーに関わる道はたくさんありますよね。試合に出さないことで、大人が子どもの未来の可能性を潰してしまう。それは絶対に避けたかったんです」
松田部長はその話に大きくうなずくと「全員がプロにはなれないわけで、サッカーの入り口であるジュニア年代は、楽しむことが一番ですよね。私も小学生のときに、初めてサッカークラブの練習に行ったら、一つ上の先輩が優しくしてくれて、一緒にやろうぜと言ってくれました。みんなと一緒にボールを追いかけたら、すごく楽しくて。それがサッカーの原点です」と懐かしそうに振り返ります。
■僕も私もみんなが主役!チャンスは平等に
『補欠ゼロ』の大会を開催している見附小学校サッカークラブ。先日、「僕が私が主役!」というテーマで大会を開きました。そこでは女の子が活躍し、練習でも点を取ったことのない男の子が、試合終了間際に劇的なゴールを決めて大会のMVPに選ばれました。大塚さんは「子ども達の成長スピードはそれぞれで、身体の大きさも違います。それを踏まえても、チャンスは平等に与えるべきだと思うんです」と「補欠ゼロ」の大会を開く意義を語ります。
この理念に共感した、近隣の小学校に通う生徒の保護者から「うちの子も見附小学校のサッカークラブに入れたい」という声も聞かれるそうです。
インタビューの合間にグラウンドに目を向けると、お父さんコーチたちと子どもたちが一緒になって試合をしていました。大人も子どももみんなが楽しそうで、上手くできないことに対する叱責も、ミスをなじるような声もありません。
その様子を見て、大塚監督は「練習の最後にコーチと子どもたちが一緒になって試合をするのですが、それがみんなの楽しみになっているんですよね」と言います。芝のグラウンドで、ひとつのボールを追いかける大人と子どもたち。その光景はまさに「グラスルーツ」を体現しているようでした。
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