JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問
2017年12月14日
第一線から退いてもサッカーができる「受け皿」に。地域クラブ・藤岡キッカーズが目指す誰でもプレーできる環境づくり
日本サッカー協会(JFA)グラスルーツ推進部の松田薫二部長があなたの街のサッカーチームを訪ね歩くこの連載。
今回、訪れたのは群馬県藤岡市にある、50年以上の歴史を持つ蹴球団藤岡キッカーズです。
前編では、蹴球団藤岡キッカーズが中学生年代のジュニアユースを創設し、地域の新たなクラブチームとして歩み始めてから、やがて受け入れられるまでの経緯を伺いました。後編ではこれからの展望についてお聞きします。(取材・文:杜乃伍真)
■障害を持つ子どもとの交流は社会性や人間性も育む
「自分たちがどこまでできているかわかりませんが、JFAさんが推し進めようとする取り組みに共感しています」とU-15代表・堀江聡さんは言います。
堀江さんにお話を聞くと、『補欠ゼロ』や『引退なし』といったテーマに対する取り組みのほかにも、『障がい』をもった子どもたちの受け入れについても「クラブには養護学校の教師をしているコーチがいるので、将来的に考えていけたらいいなと思っています」と展望を語ってくれました。これを受けて松田部長が他の事例を交えながらこんな話をしました。
「現状では障がいを持っている子どもたちのスポーツをやる場が限られているので、一般のチームが受け入れていく必要があると思っています。そうすることで健常者の子どもたちが障がいを持つ子どもたちから学べることがある。お互いが交流することで社会性や人間性といった側面も育まれるのではないでしょうか。茨城県のバンクル茨城というチームでは、障がいをもつ子どもたちを受け入れてサッカーを教えて、さらに試合にも出ているんですよ」
松田部長の話をじっくりと聞いた堀江さんは「そうなんですね。実は、藤岡にも養護学校ができて、そこでは障がいを持った子どもたち向けのサッカー教室が行われているんです。僕らがそういう学校と連携するなど、この藤岡という地域で取り組んでいくことは将来的にできるかもしれません」と納得するように話しました。
■第一線から退いてもサッカーができる「受け皿」に
「色々とやろうと思っていることはあるのですが、指導するスタッフの人数が足りないという課題もあるし、まだまだこれから、というのが現状だと思っています」
こう話す堀江さんに対して、松田部長が「どんどんチャレンジしていってもらえればと思います。では、将来的な夢はどう描いていますか?」と聞くと、堀江さんは間髪なく、目の前でサッカーに興じている子どもたちの様子を眺めながら、こう答えました。
「それはやはり、この子どもたちが大人になったときに、サッカーから離れなくてもいい受け皿を僕らが用意することだと思っています。選手として第一線から退いたときに、その後も好きなようにサッカーができる環境を用意しておいてあげたい。来年、大学を卒業して社会人となるジュニアユースのOBが3人、県社会人リーグに参戦している本クラブのトップチームに入る予定なんです。今は、このトップチームにはOBが一人しか在籍しておらず、あまりジュニアユースとの交流がない。でも、どんどんOBとの繋がりを太くしていければ、クラブとして次のステップに進めると思っています」
クラブのOBであり、現在はU-15監督の岸憲彦さんは「自分は社会人になったときに県リーグで藤岡キッカーズが活動していたのでサッカーを続けられた一人です。大人になったときに、休みの日にあのグラウンドに行けば必ずサッカーができる、そこに行けば対戦相手がいる、という環境があれば、『引退』することなく生涯サッカーを楽しむことができますからね」と話します。これを受けて松田部長が神奈川県の『あざみ野キッカーズ』の例を挙げました。
「あざみ野キッカーズは毎週日曜日の午前中、あざみ野第二小学校のグラウンドを開放しているので、好きな人たちがそこに集まってサッカーができる環境があるんです。そこでは40代でも50代でも、みんなが集まって楽しみながらサッカーをやっているんですよ。地域の取り組みとして、どの地域でも実現できることだと思います」
堀江さんはその話を頷きながら聞いていました。
「僕らはここにグラウンドがあるから、もっと地域に開放することができれば実現できることなのかもしれませんね。今でもOBの子たちがときどきこのグラウンドに戻ってきてくれるんです。彼らはクラブを卒業してもクラブのホームページを気にして見てくれているようで、『昨日の試合はこんな感じだったんですね』なんて会話をしてくれます。毎年正月に初蹴りを開催すればOBの子たちも帰ってきてくれます。そういう繋がりをもっと太くしていけたらなあと思っているんです」