楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた
2018年12月12日
グリット(やり抜く力)をつける正しい方法とは? 子どもの「内側から」のやる気を起こす指導のありかた
■大人自身がやり抜く力を持っているのか
※写真はサカイクキャンプです
ところが、小学生の部活動とも言える少年スポーツの世界では、「親が認めていれば構わない」という感覚が指導者にあるようです。そんな指導者側の甘えが、少年サッカーの指導から暴力を追い出せない理由のひとつだと思います。
この「保護者は認めている」という印籠は、「少し小突くくらいは親も許すだろう」や「暴力をふるわなければ、暴言は構わない」「言葉で追い詰めるのは、暴力ではない」という間違った認識を生みます。
冒頭でお伝えした沖縄で監督が書類送致されたクラブでは、被害児童の保護者以外の親たちが「チームに残ってほしい」と希望し、監督を続投していると伝えられています。沖縄県のサッカー協会は「口頭で注意をした」と書かれていました。
実は、蹴られた子のひとりはサッカーをやめています。被害児童の親たちは提訴も視野に入れているということですが、同じ地域で暮らし、同じ小学校にも通っているかもしれない環境で、自分たち以外の親が指導の継続を求めている監督を訴えるのは非常に難しいでしょう。
暴力や暴言に頼る指導は楽です。教える側は工夫しなくていいし、考えなくて済みます。
でも、それを保護者が「そのくらいは大丈夫」と認めていても、指導者が「それはダメです」と言い続けるグリットをもってください。場合によっては他チームのことであっても見て見ぬふりをせず「それはダメです」と言ってください。自分の意思をどんな状況でもしっかりと保つことで正しい指導者に近づいてほしい。
グリットをもとうとしない大人が、子どもにそれを求められるでしょうか。
「一生懸命やらないと仲間から信頼されないということを伝えたかった」
これはそっくりそのまま、このコーチ自身に向けられる。それと同じことだと私は思います。
1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜経済大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。
Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。