楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2019年3月27日

握手をしない高校球児がグッドルーザーになれない理由

■対戦相手は「敵」ではない


サッカーでは試合前に対戦相手、審判と握手する儀式があります(写真はイメージです)

 

それは、歴史の進展の過程で武士道の精神がスポーツへと連続しなかったからです。

1900年初頭の日清・日露戦争までは、軍隊内部にしごきや体罰はなかったといわれています。諸外国に追い付け、追い越せと、諸藩から優秀な人が集まり、二つの大きな戦争で日本は勝ちました。全員が同じ方向を向き、究極の内発的動機付けで兵士たちは強くなったのでしょう。

そこからさらに日本は、身の丈に合わない戦い進んでいきます。所謂欧米列強に勝ちにいくわけです。そのためには大量の兵士を短期間で屈強な軍隊に仕上げなくてはいけません。

そこで方法論として訓練の過程に暴力やしごきが流入しそれが一般化していったのです。

その後、1925年(大正14年)4月11日に「陸軍現役将校学校配属令」が公布されます。これによって、一定の官立又は公立の学校には、原則として「陸軍現役将校」が教練(陸軍の訓練に準拠したもの)を指導する体育教師として配属されていきます。つまり軍人の学校配属とともに、体罰や暴力、圧迫指導が学校に入り込んだのが、学校教育に体罰がはびこる入り口になったといえるのです。

高校野球の握手拒否から軍隊の話になるのは大げさだと笑われるかもしれませんが、私は笑ってすませることができません。

例えば、サッカーではいま「敵」「味方」と言わないよう、指導者は努めています。スポーツ紙などでは1990年代に「敵」の表記をしないよう通達があったと聞きました。

ところが。

日本高野連では数年前、全国の関係者が集まる連絡会議の席で、元会長がこう言ったそうです。

「お互い敵なのだから、選手同士が握手をするのはやめよう」この一言が、握手禁止と受け取られ、東京や神奈川では握手をしないルールになっているのではないかという情報もあります。

地位の高い人がおっしゃったことを、そのまま忖度した大人たちが、未来を生きる子どもたちに伝えてしまったのではないでしょうか。

少年サッカーも、これを他人事にしてはいけません。

握手をする。

敵とは言わず「相手」、もしくは「フェロー(仲間)」(池上正コーチのアイデアです)と呼ぶ。

そんな見直しを、ぜひ行ってください。

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高橋正紀(たかはし・まさのり)

1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜経済大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。
Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。

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