楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2019年8月21日

「だって、僕が後悔するじゃないですか」勝つために子どもたちの自主性を封印する指導者が残すもの

■「だって、僕が後悔するじゃないですか」大人のエゴは何を残すのか


選手が自己決定して挑むことで、自信と成長につながるのです(写真はイメージです)

 

ある高校野球の名門校の監督さんは「自主自律を重んじて指導をしている」と話したそうです。指示せずに選手にやらせているといいます。

ひとりの記者が「勝負所でも指示はしないのですか? 高校サッカー界では、全国大会の舞台でも指示しないコーチがいるそうですよ」と話したら、その監督はこう答えました。

「それは指示しますよ。だって、僕が後悔するじゃないですか」

残念ながら、軸は選手ではなく、かかわる大人なのです。

監督の言うとおりにして負けることもあります。言うとおりにして勝つこともあります。いずれの場合も、何が残るでしょうか。

選手が自己決定して挑む。負けても、そこには自分たちで考えて挑戦したという満足感と、ではどうすればよかったかという未来への問いが残ります。

勝てば「自分たちで考えて勝てた!」というかけがえのない自信が残ります。

 

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高橋正紀(たかはし・まさのり)

1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。
Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。

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