本番に強い子を育てるために大切なこと
2016年12月28日
「落ち着いて!」「焦らない!」はNGワード。本番に弱い子どもへの正しい声がけとは?
近隣チームとの「練習試合」、区大会、都大会、県大会といった「公式戦」、トレセンやジュニアユースの「セレクション」など、サッカーをしている子どもにはさまざまな「本番」があります。
ところが、
「大事な試合になると、本来の力を発揮できない」
「気持ちが弱くて、本番のプレッシャーに負けてしまう」
「本番になると信じられないミスを連発してしまう」
「練習ではできていることが試合ではできない」
という声は、サカイク編集部にも多く寄せられます。そこで、自身もサッカー経験者であるメンタルトレーナーの森川陽太郎さんに、著書『本番に強い子の育て方』から、我が子に親として何を心がければよいのかについて、お話を伺いました。(文:熊本りか)
■本番で力を発揮できる人=緊張しない人、ではない
子どもが「本番」で本来の実力を発揮できない理由。多くの場合、それは「緊張」です。
極度の緊張の中で、心臓がドキドキして、手は震え、頭は真っ白。そんな自分に焦れば焦るほど、気持ちだけが空回りして体がついていかない。
そういう経験は誰にでもあるはずです。
では、どんな場面でも自分の本来の実力を発揮できる人というのは、緊張しない人なのでしょうか?
答えはNOです。
クリスチアーノ・ロナウドやメッシだって、重要な試合の前には非常にナーバスになっているはずです。それでも結果を出すことができるからこそ、彼らは一流なのだとも言えるでしょう。
つまり、本番に強いか弱いかは、緊張するかしないかの違いではありません。
「たとえ緊張していても実力が発揮できる人」。
それこそが、真の意味で「本番に強い人」なのです。
■「緊張」を無理に打ち消そうとするから、力が発揮できない
「緊張」は、無意識にわいてくる感情です。
感情というのは、それがどんな種類のものであっても自分の力で打ち消したり、別の感情に変えることはできないもの。好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌い。「緊張」だって、それと同じなのです。
ところが多くの人は「緊張」=「悪いもの」と思い込んでいます。
それは「緊張して信じられないミスをした」など、過去に緊張して失敗した経験によって、「緊張」と「失敗」がセットになっているから。
そのため、「緊張」を打ち消そう、打ち消そうとしてしまうのです。
けれども、心理学的な観点から言えば、わき上がる「感情」と「思考」が一致しないこと、つまり、本当は緊張しているのに、緊張していないとあえて考えることは非常にストレスを与えることです。大事な試合中に、緊張を打ち消すことばかりに気を取られていては、よいパフォーマンスが発揮できるはずはありません。
つまり、明らかに緊張している様子のお子さんに対して、「落ち着いて!」「焦らない!」「平常心で!」という言葉をかけたり、「大丈夫、全然緊張していないよ」などと暗示をかけるのは、実は全くの逆効果。
また、「緊張のあまり緊張に気づかない」ということも実はよくあることで、この場合も結果的に「感情」と「思考」の不一致が起こってしまい、本来の力を発揮することができません。
大事なのは、「緊張しているよね、でも大丈夫だよ」という声掛けで、感情をむしろしっかりと自覚させ、それに素直に向き合うことを後押ししてあげることなのです。
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