あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2017年8月25日
ドリブルなど個の力と、連携重視の和の力。U-8の子どもたちはどちらを伸ばせばいい?
■実践形式の練習でも基礎技術は磨かれる
例えば、3対2や4対2などでパス回しをしていると、動きながらパスをするという技術が自然に習得されるので試合の中で使う技術が身に付きます。
逆に、よく見られる向かい合っての対面パスが試合のなかで使われることは、まずありません。
すでにさまざまなところで説明していますが、コーンドリブルや対面パスなどひとりで行う練習は「クローズドスキル」と言い、ディフェンスをつけたパス回しや2対1、3対2などの実戦的な対人練習が「オープンスキル」になります。
講習会などで直接指導者の方と接すると、対人のオープンスキル練習を戦術練習だと思われている方が少なくないことに気づきます。そうではなく、オープンスキルの中でも基本技術は磨かれます。
だから欧州では、育成年代では「サッカーが上手くなるには試合をすればいい」という考えが浸透しているわけです。試合は究極の「オープンスキル」ですから、個の力を伸ばすにも効果的です。それは近年、ドイツが「ジュニア期はとにかく試合をさせよう」と育成の方法を転換して成果を挙げていることがひとつの証左でしょう。
試合でドリブルが大きくなれば相手に取られるので、子どもはそこを意識してプレーします。パスやドリブルも同様で、トライ&エラーをしながら試合に活きる技術が磨かれます。このことは理に叶っていますし、理に叶ったトレーニングが「質の高い練習」と言われるわけです。
■サッカーの捉え方を変えてみる
「そうは言っても、1年生は難しいことはできない。対面パスくらいしかできないじゃないか」と思われるかもしれません。でも、ぜひ長い目でやらせてください。数カ月経つごとに、正確にキックを蹴る場面がちらほら出てきます。
試合を眺めていて「なんだかいつの間にか形になってきたなあ」と感じる瞬間も増えるはずです。
ご相談者様もそのように理解していただけませんか。
つまり、「個か和か」ではなく、ふたつの能力を磨く作業は並行して行えるということです。もちろん、個々で苦手なことはそれぞれが自主的に練習して解決するものですし、何か一つの技術がそのチーム全体で足りないと思えば、そこを重点的に練習したり、意識して行うよう導いてください。
そして何より、サッカーのとらえ方を考え直してみてください。ジュニアのときに下手でもサッカーは楽しめます。サッカーの楽しさを味わえば、その子がそのあとどう自分で取り組むかによっていくらでも上達します。
池上 正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。
12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。