あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2017年8月31日
学年の違う子どもたちを一人で指導。 低・中・高、同時に教えることはできる?
■異年齢で練習するメリット
ところで、異年齢の縦割りで行う練習の良い点は何だと思いますか?
まずは上の学年の場合。体が小さく、技術も未熟な下の学年と練習をさせると、保護者のみなさんは「下の学年の子は上手な上級生とやれるので上手くなるかもしれないけれど、上の学年の子にとっては無駄なのでは?」という疑問が浮かぶようです。
私は違うと思います。
大きな子は小さな子が必ず間に合うよう、より正確でやさしいパスを出さなくてはいけません。さまざま気遣いをしなくてはいけないので、頭を使います。体力差も技術差もあるため、下のことやると、自分たちが覚えたいことがやりやすくなります。
つまり、さまざまなことをトライしやすい。学年ごとにやる練習ではできないことを試したり、成功体験を積むことができます。
それでも、やはり差が大きすぎるなとコーチが感じたら、4対6とか、試合なら5人対8人でやるなど、上の学年の子たちに負荷をかければよいのです。そのような負荷のかかった状況で、3人に囲まれたりしてもボールをキープできたり、数的不利のなかでも頭を使って賢くサッカーをすることを覚えます。
■チャレンジ精神と技術の向上が望める
では、下の学年の子はどうでしょう。
上の子にはどんどん向かって行けるし、失敗しても、ボールを取られても、強い強い上級生だから仕方ない。そう思えるので、どんどんチャレンジできます。横割りの同学年の中では上手で目立つ子にとって上の子が壁になってくれるので、より技術の向上が望めます。
加えて、上級生は自分たちがやったことのないようなプレーをするため、目の前で直接見ることは非常に刺激的です。見たプレーを真似するなどしてうまくなるものです。
また、上の学年と行う縦割りの練習で、何人かの下級生が場面によって通用するようなら、時々横割り練習のときも飛び級で上の学年に入れて練習させてもよいでしょう。
特に、スピードで抜けてしまう子にとって、早い時点で「スピードだけでは勝負できない」と気づかせなくてはいけません。かわす技術や、仲間とパスをつないだり、ほかの選手を使ってゴールを決める術を身につける必要性を感じさせるのです。
一方で、横割りもメリットはあります。同じ学年同士なのでライバル意識を持ちますし、各々の技術がある程度均一なためチームのレベルに合わせたメニューを選べます。
池上 正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。
12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。