あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2017年10月27日
サッカー経験が乏しく何を教えればいいのか分からない。おすすめの練習法を教えて
サッカー経験がほとんどないコーチ。子どもたちが楽しむことを最優先にしているけれど、何をどう教えていいのかわからず悩んでいるそう。「楽しい」はこのまま、もっと上手く成長させる方法はないのかご相談をいただきました。
これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんはどのようなアドバイスを授けたのでしょうか。(取材・文:島沢優子)
<<際立って上手いが、横柄な態度の子。チームプレーヤーだと認識させる方法は?
<お父さんコーチからの質問>
クラブチームのコーチをしている者です。コーチ歴は1年弱です。
選手の内訳は、2年生10人、3年生4人、4年生9人、5年生3人、6年生1人 です。
私自身、小学生の時に遊びでサッカーをやった程度なので、他のコーチの練習や子どもとの接し方をみると自分が間違っているんじゃないかと悩みます。
現在、チームの方向性はとにかく楽しみ楽しませる事。くだらない事を話して笑い、彼、彼女達を知ること。そして汗をかく事です。
指導についてあまり分からないのと、自信が無い事もあって技術的な事、戦術的な事は2の次3の次になっている次第です。
子どもたちをもっと上達させ、成長させ、さらに楽しくさせるには何を勉強するのがいいのでしょうか?
そして草サッカーの延長のような現在の状態をどのように思われるかご意見いただけますと幸いです。
<池上さんのアドバイス>
ご相談、ありがとうございます。
ご自分に競技歴がないなか、子どもたちのためになる指導とは何かを真剣に考えていらっしゃるようです。同じ指導者仲間としてとてもうれしく思います。
また、「他のコーチの練習や子どもとの接し方をみると自分が間違っているんじゃないかと悩む」とあるのは、恐らく他の方は厳しめに指導されているのでしょう。
練習のやり方については、以下の方法を参考にしてください。
■まずは子どもが大好きなミニゲームで課題を洗い出す
練習の流れを「M・T・M」で進めます。「M・T・M」とは、マッチ(試合)・トレーニング(練習)・マッチ(試合)のこと。これは日本サッカー協会も推奨している方法です。
まずは、子どもたちの大好きなミニゲームを行います。ゲームをすると、その時点で子どもたち、チームに何が足らないかが見えてきます。
「こういうミス、みんなよくやるなあ」
「あの子は周りが見えているけど、こっちの子は見えてないなあ」
「ワンツーパスがなかなか出ないなあ」
例えばこのようにさまざま課題が出てきます。これはサッカーをやったことのない人でもわかるはずです。
このように、最初のゲームで子どものたちの課題をインプットしたら、それに即した練習をします。もしくは、いつも行っている2対1や3対2などの練習のなかで課題を意識させて行ってもいいでしょう。
「じゃあ、今日はパスの練習をしよう。まずは仲間をよく見ることを意識しよう」そんなふうに声をかけるのです。
このとき、課題をたくさんあげすぎないこと。欲張らずにひとつかふたつで十分です。そのほうが選手も指導者もそのことに集中して取り組めます。
■子どもは勝手に上手くなっていく
練習メニューをやったら、最後に再び試合をします。
「練習でやったことに注意して試合をしよう」とやる前に話してください。そして、試合中も、そのことを意識させる声かけをします。
時間もM・T・Mで三分割します。1時間半(90分)の練習だとしたら、アップ等の時間をのぞきおよそ25分ずつくらいでしょうか。
そうすると、練習時間の3分の2はゲーム。そのなかで、子どもたちは勝手にうまくなっていくと思ってください。
他の相談や拙書『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』でも伝えていますが、ドイツはジュニアの育成をゲーム中心のこのやり方で行ったことで世界チャンピオンに返り咲きました。