あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2017年11月 1日

【ドイツ視察①】練習と試合で顔つきが変わるドイツの子 ~コーチの矜持とは~

■お金が行き来しない「一枚の契約書」の価値

実は、コーチたちはボランティアといえども、指導者としてクラブと契約書を交わしています。契約書は、例えばこんな感じです。

「私はヘネフフットボールクラブの10歳以下のコーチとして働きます。週に平日は2回、土日のどちらかの日を指導します。これに対する報酬は、年間○○ユーロになります」

そして、最後にこう書かれています。
「あなたは、この報酬をクラブに寄付しますか?」

イエスかノーを選んで、サインする欄があります。

ここに、コーチは全員、イエスを選んでサインします。つまり、コーチフィー(指導料)はクラブに寄付される。寄付の文化が浸透している欧州らしいシステムだと思いました。

このやり方がドイツでは慣習になっています。

日本人で長くドイツでコーチをしている方が「僕には1歳の子どもがいる。生活していかなくてはいけないから、ノーにサインしてはいけないのか?」と他のコーチ仲間に尋ねたら(恐らく冗談で)、「早くサインしろよ」とにべもなく言われたそうです。

よくよく考えれば、全員報酬を受け取らないわけだから、最初からなにも契約書を交わす必要はないのかもしれません。ですが、サインするたびにコーチは「それだけの報酬分の指導をしている」という矜持を持てます。それと同時に「報酬を返却し、わがクラブに貢献している」という誇りも抱くことができます。

そういった意味で、お金が行き来しない「一枚の契約書」の価値は大きいことでしょう。

それは、決して独善的にはならず、ドイツサッカー協会の指針に則りよりよい指導を目指す原動力になっていると考えられるからです。

さらにいえば、あるランク以上のライセンス保持者は、ドイツサッカー協会から「指導料」として支払いを受けているそうです。それは、生活できるだけの金額ではありませんが、その地域の他の指導者の指導等にもかかわるような責任を生み出しているのだと思います。

とはいえ、地方クラブは、決して裕福ではありません。地元で常にサポート企業を探し、カフェテリア売上等を活動収益にしています。

トップの試合の日などに、クラブに所属する子どもの親たちが各々クッキーなどを焼いて持ち寄り、バザーをするのも活動費のためです。

日本も真のサッカー文化を根付かせるためにどうしたらいいのか。そのことをもっと考えてゆかなくてはならないと感じました。

次回はドイツのサッカー人口についてお伝えします。日本では年齢が上がるほど競技人口が減るピラミッド型なのに対して、ドイツでは逆三角形に近い年齢構成になっている理由とは。

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