あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2017年11月 6日
【ドイツ視察③】守備をつけないパターン練習を生かす ~真似したいドイツ育成年代の指導とは~
■見本以外のプレーにも自由にチャレンジするドイツの子どもたち
コーチがデモンストレーションを見せるなどして、フェイントやラインを抜け出す方法を教えますが、それを子どもたちが行う回数はそんなに多くはありません。
ほんの数回やったら、コーチが「じゃあ、自分で考えて自由にやってごらん」と声をかけます。
すると、子どもたちはコーチがデモで見せたこと以外のこともどんどんやり始めます。この「自分で考えて自由に」の時間が、圧倒的に長いのです。子どもたちは並んでいる間に、パッサーの仲間と「次はこんなことやる?」とか「これやってみたら?」などと打ち合わせして試しています。相手に合わせて、創造力を働かせてプレーするわけです。
その様子を見ながら思いました。
「日本の子どもたちは、そんなふうに言われたら戸惑うやろうなあ」と。
しかも、ドイツのコーチは、その自由な時間は何もアドバイスせずにじっと見守っています。「これはダメ」は無論のこと、「こうしたほうがいいよ」といったことすら言いません。
日本と圧倒的に違うのはここです。つまり、自分たちで考えさせることを徹底しているわけです。
だから、練習が「試合のための練習」として成立するのです。
一方、日本では、少年サッカーの指導者が「練習のための練習になっている気がする」と悩む声をよく聞きます。試合ではコーチが介在できないのに、練習で過度にアドバイスして「やらせてしまう」からだと思います。
ドイツのように「自分たちでやってごらん」の時間を、もっと濃密なものにしなくてはいけないのです。
ただし、デモのときのアドバイスは非常に細かい。例えば、スロワーがボールをバウンドさせて投げたら、コーチは「ワンバウンドはダメ。味方が処理しやすい胸に落として」などと修正します。
■コーチは社会性やメンタルなど人間教育の勉強も
そんな練習を見ながら、オシムさんを思い出しました。オシムさんも非常に細かく、それなのに、自由でした。
「日本人は白か黒をはっきりつけたがるけれど、世界にはグレーという色もあるよ」とおっしゃっていました。選手にも「他の選択肢は?」「他のやり方は?」と多様性を求めました。
また、ライセンスコーチは、サッカー協会から報酬こそあっても「チームの勝利」を求められているわけではないことをしっかり理解していました。教育や社会性、メンタルのことなど、サッカー以外のこともしっかり勉強しています。
なぜなら、ドイツは学校の授業に体育科がないため、縦割り社会や協調性、リーダーシップなど、さまざまな人間教育的なことをスポーツクラブで教わります。そのぶん、指導者の資質や責任も問われるため、勉強するのかもしれません。
また、クラブの練習は、小中学生で平日は週に2回、高校生で3回程度。小学生は8歳までリーグ戦もありません。9~10歳は毎週の試合は1回だけです。
適正なやり方で、適正な量の練習をする。
そんな当たり前のことを、あらためて思い知らされました。
真似したいドイツ育成年代の指導とは