あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2017年11月17日

シュートセンスがあり上手いが相手との競り合いを嫌がる子。ボールの取り合いをどう教えればいい?

■不利な戦いの前に、ボールを失わないスキルを身につけさせる

それなのに、みなさんの指導を見ていると、同じ場所にとどまって相手と押し合いへしあいする練習が少なくありません。

「(押し合いに)負けるな!」とよく声がけをしていますが、このようにして当たっていくやり方では、体の小さい子、力の弱い子が不利に決まっています。

そこを押し合わずにかわせるようになったところで、「次は相手のボールを取りに行ってみようか」とディフェンスでのアタックを教えます。

「ボールを取られなくなる」ことをクリアしてから、相手のボールを取りに行くことを指導するわけです。


そのようなプロセスを踏んでいけば、相手が押してきたときに、どこかに逃げたり、かわせる技術が身につきます。そしてそれはそのまま、プレーの連動性をアップさせることにつながります。

つまり、一カ所にとどまらずいつも動けるようになります。逆に、パワープレーで相手と押し合いへしあいしてしまうと、止まっていることが多くなりますね。体の小さい選手はそうなっては不利です。

可視化できる日本人のお手本を挙げるなら、香川真司選手にそんな雰囲気があります。体が大きくないため、うまく逃げることでコンタクトを避けてボールを保持できる。そんなイメージの選手です。

■失敗してもいいよ、という雰囲気の中で挑戦が生まれる

加えて「プライドが高めなのも聞き入れられない要因のひとつ」とありますが、子どもたちが「失敗したくない、負けたくない」と思うのは自然なことです。しかも、彼らは挑戦することを恐がります。

例えば、「ボールを取りに行け!」と言われて、もし取れずに抜かれてしまったら、それを失敗したと思ってしまう。そんな傾向が強いようです。

そこで、周囲の大人たち(指導者や保護者)の掛け声や醸しだしている空気を、一度見直してみてください。

「ミスするな」「抜かれるな」と言い過ぎていないでしょうか。

私がこの連載や拙書でずっと言い続けているように「失敗することは悪いことではないよ」というメッセージが、ちゃんと子どもたちに伝わっているでしょうか。

もともとプライドが強いから、周囲のアドバイスを聞き入れられないのか。
失敗するのが恐いから、周囲のアドバイス通りにトライできないのか。

この二つは表面的には「ボールを取りに行かない」という同じ現象を引き起こしますが、読んでおわかりのように要因はまったく異なるものです。

「失敗してもいいよ。問題ないよ」そんな空気をつくってあげてください。

池上 正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。
12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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