あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2018年4月17日

【特別寄稿 後編】日本サッカーに足らないもの~日本代表の現状から見える育成の課題

6月に開幕するW杯ロシア大会を前に、日本代表がもがいています。先日、大会2か月前というタイミングでハリルホジッチ監督の解任と、後任としてJFA技術委員長を務めていた西野朗氏が代表監督に就任することが発表され、日本中を驚かせました。

監督交代によって本大会がどうなるのかは分かりませんが、前任のハリルホジッチ監督が率いた3年間を見てみると、前大会までの中心選手から新世代へのバトンがつながらないという新旧交代の難しさはあるにしても、3月に行われた本番を想定したマリとウクライナ戦は1分1敗。結果もさることながら、内容も本番での修正を楽観できるようなものではないと思われました。

先日発表されたFIFAランキングで日本は先月より5ランク下げて60位と後退。2000年に62位になった以来のことで、過去18年でワーストの順位です。日本のサッカーが強くなっているとは言えない状況です。

日本代表に何が足らないのか。
そして、今の代表の姿から見える育成の課題とは何か。


池上正さんに聞いてみました。(取材・文:島沢優子)

ゲームをすることでサッカーの認知を高める ※写真はU-12ワールドチャレンジの写真です。記事内容とは関係ありません

<<前編:日本サッカーに足らないもの~攻めの"厚み"を形成する「アイデアと意思」

■「教育の差」をサッカーで埋めていくために

「子ども時代からたくさん試合をさせる」
育成年代から連動することの重要性を理解させるための方策のひとつとして、前編でこれを挙げました。育成改革に成功したドイツとイビチャ・オシム元日本代表監督がともに指摘していることです。

ゲームをすることで、サッカーの理解を深める。つまりサッカーの認知度を上げることを目指すのです。

「子どもは本来、どんどん前に行きたい。シュートを打ちたいはず。その気持ちを削らないようにしつつ、でも、パスすると、もっとよくなるよということを理解させてほしい」と池上さん。

「そこ、無理しないで!」
「強引に行くなよ!」
「もっと回してじっくりいこう」

ジュニアの試合を見ていると、大人が戦況を読みながらさまざま指示をしています。

「ほとんどの場合、大人たちがゲームコントロールという名目で、子どもが前に行こうとする気持ちを削っています。前に行きすぎて、カウンターを食らったとしても、絶対叱らないでほしい。前に行ったことを褒めて、じゃあ次はどうすればうまくいくかな?と考えさせればいいのです」

■指示され続けると自分で考えなくなる

サッカーは、みんなが協力し合ってボールをつなぎ、ゴールを狙うスポーツ――そんな理解を深めるためにも、指導者は過度に指示をせず、選手の自由度を上げることが必須なのです。

「次はこうしろという指示命令は子どもの判断を奪う」はよく言われること。加えて、"指示され続ける"と、子どもが自分で考えなくなることも同時に大きな問題でしょう。

ジュニアの指導者と情報交換するとよく出てくるのが、「ミスしたり、失点するとすぐにベンチを見る」という話です。中には「ベンチじゃなくて親を見る」という子どももいます。

日本サッカー協会会長の田嶋幸三さんが、自著『「言語技術」が日本のサッカーを変える』で2006年W杯イタリア対ドイツ戦を観戦したときのエピソードを書いています。

試合途中で退場者を出したイタリアの選手たちは、そのとき一切ベンチに指示を仰がず、自分たちで話し合ってフォーメーション変更の対処をしたそうです。

その様子を見て、田嶋さん含め日本のサッカー関係者は「これでは日本は到底太刀打ちできない」と口を揃えたといいます。

次ページ:日本のサッカー選手に足りないもの


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