あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2018年7月 6日
ボールを奪いに行かない低学年。自分からボールを奪いに行けるようにするにはどんな練習をすればいい?
■「届きそうな目標」になれば子どもたちも自ら動きだす
※写真はサカイクキャンプの写真です。 質問者及び質問内容とは関係ありません
さらにもうひと工夫したいときは、コーチが中に入って相手をします。
「さあ、取りに行くぞ~」とボールを奪取しようとする姿勢を見せます。気の弱い子が勇気を出してゴール前を守るコーチのボールを取りに来たら、時にはボールを奪われてしまっていいでしょう。ゴール前なので、その子はすぐにシュートを打てます。そういう子はシュートを打てたことや、ゴールできるとうれしくなります。
繰り返しになりますが、ダンゴになってボールに触れない子が多い場合は、とにかく狭いコートでプレーさせてください。ボールを取り返したら、すぐシュートできる。そんな状況をつくれるようにしましょう。
子どもたち全員が、心から上手くなりたい、目の前の相手に勝ちたいと思っていることを、指導者は忘れないでください。でも、あまりにもその目標に手が届きそうにないと、あきらめてしまいます。あきらめが出ると、足も止まってしまいます。
これは大人も同じですね。
ですので、トレーニングを工夫して「届きそうな目標」に変えてあげることが、コーチの腕のみせどころです。
今回のご相談をされた方には、子どもたちがみんなサッカーを楽しめるように、サッカーの成り立ちを理解できるようなんとか工夫したいという情熱が感じられました。
何かが「できない子」を責める大人は少なくありません。「できる姿がマルだ」という理解で指導しているようです。そうなってしまう背景にはやはり勝利が絶対という価値観があり、その後ろには多くの大会がトーナメント形式であるという事実があります。
どうか、ひとりひとりのハードルを考えて、その子たちが成長できるよう工夫を重ねてあげてください。
池上 正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。
12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。