あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2018年8月10日
暑い日の試合だとやる気が出ない子どもたち。どうすればいい?
練習試合をしたら、うちのチームだけ「暑い」という理由でサッカーを楽しんでない。ほかのチームは子どもたち同士で声かけもして楽しんで動いているのに、どうして? ほかのチームみたいにやる気が出るようにするには、毎日の指導でどう伝えればいい? というご相談をいただきました。
今年の夏は、大人でもやる気がそがれる酷暑続きですが、その中で子どもたちの健康に気をつかいながら楽しく練習させるにはどうしたら良いのでしょうか。
これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが授けるコーチングを参考にしてみてください。(取材・文:島沢優子)
<<サッカー未経験コーチの悩み。 選手同士の声がけ(コーチング)を増やしたい!どうすればいい?
<お父さんコーチからの質問>
地元少年団の3年生を担当している、サッカー未経験コーチです。地元のチームでは、中の上くらいのレベルです。
つい先日の猛暑日に練習試合があり、3チームで休み休み行いました。暑い中の試合で子供達の考える力が低下し、声も全く出ず、ほとんどの子の足が止まり全敗。勝ち負けが目的ではないのですが、そもそもうちのチームの子どもたちは、暑いという理由でサッカーを楽しんでいませんでした。しかし、相手の2チームは声かけもよくしていて全員が動き楽しんでいます。
同じ条件なのに、なぜうちのチームだけやる気がでないのでしょうか。
暑くてもサッカーを楽しめるようにするには、日頃の練習をどのように指導や伝えていけばいいでしょうか?
<池上さんのアドバイス>
ご相談、ありがとうございます。
文面からだけではどんなふうに試合を行ったかわからないのですが、子どもたちは最初の1試合目から集中できなかったのでしょうか? それとも、負けた試合の終盤や、2試合目などで負けていて、暑くて、やる気を失ったのでしょうか。
今年の夏はご存知の通り、異常な暑さです。何試合もサッカーをして、しかも負けが続くと、試合することに飽きてしまいます。それでなくても暑いのに、やりたくなくなります。
しかし、多くの大人は「相手も頑張っているのに」とか、「暑さを言い訳にするな」とか「負けるのは頑張りが足りないからだ」といった言い方をします。
それではいけません。大人は本来は、暑かろうと寒かろうと「この試合を楽しんでおいで」という姿勢でいなくてはいけません。今年のような酷暑であれば、「暑いね。みんなも大変だろうけど、そのなかで自分たちなりに頑張ればいいよ」と声をかけてあげてください。
■相手チームと本当に同じ条件?
「相手の2チームは声かけもよくしていて全員が動き楽しんでいます」とあります。「同じ条件なのに、なぜうちのチームだけやる気が出ないのか」とも書かれています。が、本当に同じ条件でしょうか。
暑くても試合を楽しんでいる相手チームがどんな指導をしているのかを、ぜひ観察してみてください。ご自分の指導と何か違う部分はないでしょうか。
と同時に、前述したように「負けるのは頑張りが足りないからだ」といった主旨のことを子どもに伝えていないかどうか。勝たなければ楽しくない、といった空気にしてはいないか。そのあたりを振り返ってみてください。
先ごろ、ある県のバレーボール協会から依頼を受け、講演をしました。
「勝たないと楽しくないと思っていませんか?」
尋ねると、みなさんうなずいています。
しかし、勝った試合から学ぶものはあまりありません。敗れた試合のほうが選手にも指導者にとっても成長する糧になります。どこがいけなかったのか。何が足らなかったのか。そのために何をすればいいのか。そんなことを考えなければ、上達しません。
よってどんな日でも、やみくもに頑張るという尺度よりも「楽しみながら、きちんとその試合の課題に取り組む」ことを、コーチの方はぜひ優先させてください。
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