あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2019年4月12日

北の国から~ サッカーメインのチームでフットサルの戦術、教える必要ある?

豪雪地帯なので冬場は室内でフットサルが定番。技術を教えるのは良いと思うけど、ほかの指導者がフットサルの戦術まで教え込んでいる。

サッカーに重きをおいているチームでフットサルの戦術までしっかり教える必要はある? とのご相談をいただきました。

今回も、これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスを送ります。(取材・文:島沢優子)

どこでどんな動きをするか、戦術を学ぶことも大事です(写真はイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

<<集団行動が苦手で練習になじめない子も楽しんでスッと入れる練習と接し方はある?

<お父さんコーチからの質問>

北海道のチームでU-10年代の指導をしています。

北海道は地域柄夏はサッカー、冬はフットサルというのが定番になっています。

他のコーチングスタッフが冬のトレーニングでフットサルの技術、戦術を教え込むのですが、私としてはチームとして重きをおいているのはサッカーと考えておりますので、フットサルの技術はいいとして、戦術まで教え込むのはどうかなと思うのですが...。

池上さんはどう思われますか?

<池上さんのアドバイス>    

ご相談いただき、ありがとうございます。

北海道や東北など雪の降る地域では、冬場に屋外でサッカーはできません。フットサルを行うことは、ある意味当然のことでしょう。

■認知・判断・視野確保などサッカーに転換できるトレーニング機会が多い

文面だけでは、フットサル戦術のどのようなことをどの程度教え込むのかはうかがい知れないのですが、勝利をつかむために決まった形で攻撃させるなど「このやり方しかない」といった自由度を奪うものなのでしょうか?

もし他のコーチが「戦術指導」と呼ぶものがそういうものならば、決して賛成はできません。しかし、それとは違って、子どもたちが自分で考えるベースとして、フットサルの攻め方、守り方を知っておくことはとても良いことです。

そのなかで、子どもたちは「どれがサッカーに使えるかな?」とプラスにできるでしょう。もしくはコーチがその作業を手伝ってあげてください。それらは決して無駄なことではありません。

フットサル日本代監督を務めたミゲル・ロドリゴ氏と先日、都内でトークショーを行ったときのこと。

フットサルの有効性について彼は「コートが狭いため、素早く判断して行動しなくてはいけない。頭の回転が速くなる」と話しました。

空間が狭いので、プレーのテンポが速くなる。なおかつ、フットサルはボールがあまりはねないためコントロールしやすい。よって、顔を上げながらプレーしやすくなる。つまり、視野をとるためのトレーニング機会がたくさん転がっているわけです。

その意味で、サッカーをする入り口では、フットサルは有効といえます。特に、南米系、ブラジルアルゼンチンの人たちはそこを強調します。

■少年サッカーに応用できるフットサルの戦術、サッカーしかしてこなかった選手ができないプレーとは

では、少年サッカーに応用できるフットサルの戦術とは例えばどんなことでしょう。以下に、三つほど挙げてみます。

最も大きな利点は、ジュニアのうちに養っておきたい「全員攻撃・全員守備」の意識が磨けることです。

フィールドプレーヤーが4対4なので、全員で攻めて、全員で守らなくてはいけません。この意識があると、8人制、11人制と移行するサッカーでも大いに役に立ちます。8人制だとポジションに縛られてしまい、思い切って動くことができませんし、指導者からも「ポジション! ポジション!」と指摘されたりします。

それが、人数が少ないフットサルなら、仮にバックの選手だったとしても、チャンスと見れば攻め上がることにチャレンジしやすくなります。

ふたつめは「カバーリングの意識」です。
誰がどこをカバーしたらいいか。どのタイミングで動いたらよいか。そういったことを理解できます。フィールドの広いサッカーよりも、狭いフットサルのほうが子どもにとって理解しやすい。頭の中で空間を認知しやすいのです。

例えば、右サイドの守備の選手が攻撃参加した。そのとき、誰がそこを埋めるかとなったとき、子どもの視野のなかで理解しやすいはずです。

その意味で、戦術といった表現よりも、「サッカーの認知度」が高められるといったほうがわかりやすいかもしれません。

三つめは、足の裏を使う技術です。

どうしてフットサルが足の裏をたくさん使うと思われますか?

実は、足の裏で止めると、360度どこにでもボールを動かせます。インサイドやアウトサイドでコントロールすると、足の向いた方向のみしかパスが出せません。よって、パスを出す方向を相手に読まれてしまいます。

しかし、足の裏を使うと読まれにくい。相手がボールを奪おうと飛び込んできたときなど、どこにでもマークを外せるメリットもあります。

そして、これはサッカーしかやってこなかった選手の場合は試合でできません。日本選手はあまりいませんが、強いて言えば香川選手でしょうか。

そして、ゴール前の狭いところで足の裏を使ったコントロールを見せてくれるのが、メッシです。ロナウジーニョもそういう選手でした。二人とも南米出身で、子ども時代にフットサルをたくさんしてきた選手です。

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