あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2019年11月 8日
リーグ戦に2チーム出すときの編成法を教えて。うまい子とそうでない子で分けていい?
リーグ戦に2チームで出場するので、上手い子とそうでない子でチーム編成しようと思っている。上手じゃない方のチームは勝てないかもしれないが、同じレベルでチームを組んで試合をした方が育成環境として良いと思っているけど、チーム編成の考え方、間違っている? とご相談をいただきました。
複数チームを組んで試合に出られる場合、皆さんのチームではどうしていますか。
今回も、これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスを送ります。
(取材・文:島沢優子)
<<試合中にどんな声を掛け合えばいいのかを理解させる指導を教えて
<お父さんコーチからの質問>
池上さん初めまして。
指導しているのはU-8です。リーグ戦に出場することになったのでチームを2チームに編成してリーグ戦に出場予定です。
編成はサッカーが上手な子のチームとそうで無いチームで考えてます。その場合そうで無い子たちのチームは勝てなくなる事は予想出来ます。
勝利優先では無いにしろ、同じレベルの子達でチームを組み試合させた方が子ども達も環境的にはいいのでは無いかと思っていますが、チーム編成の考え方として間違っていますか?
また、練習ではどんなことに気を付けて指導したらよいでしょうか。まだまだ個人差のある年代ですが、今はそんなに上手でない子も劣等感を抱かずに、楽しみながら上達につながるやり方などがあれば教えてください。
<池上さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
8歳以下なので、小学2年生のチームですね。リーグ戦に複数チーム出すのは良いことです。子どもたちひとり一人のプレー時間も増えます。
さて、こちらのチームは2チーム出すということで、能力別に編成するか、2チームとも同じ戦力にするかの相談です。
■似たレベルで拮抗した試合をすることが技術向上に役立つ
それぞれレベルを分けてチームをつくるのは賛成です。この時点で、できる子たちのチームと、そうでない子たちに分けるということです。
本来なら、子どもたちのレベルが似たようなチームを集めてひとつのリーグをつくれたら一番いいはずです。大勝したり、大敗する試合は、あまり互いに上達するための試合になりません。
中学、高校、大学と進むと、練習試合などでは「B戦」とか「C戦」という対戦カードを組んだりします。似たレベルなので拮抗するため、選手の技術向上に役立ちます。
ところが、そんなふうにチームのレベルに合ったリーグを選べるかと言えば、日本のジュニアはそのような環境にはありません。
ドイツなど欧州では、ジュニア層のリーグ戦でどこと対戦しても大敗してしまうチームは「それでは面白くないよね。一つ下のリーグに行きましょう」とリーグ自体を編成しなおしてもらえます。リーグ戦文化が熟成しているので、そんなふうに臨機応変にリーグを組み立てられます。
当事者となる大人からも、子どもからも「下のリーグは嫌だ」といった声は上がりません。子どもたちの成長にとって、必要なことは何なのか。そのようなサッカーの価値観をみんなで共有しているからです。
日本ではそのような価値観がまだ育まれていないのが現実です。そのため、参加するリーグ戦を選べません。そうなると、まだあまり上手くない子たちで編成したチームは負けが混んだりします。
■レベル差で分ける時と平等にする時、両方の組み合わせで試合に出る
そこで、クラブができることは、出場するリーグ戦や大会で、その都度クラブとしてさまざまなチーム編成で臨む。つまり、上手いことそうでない子に分けるときと、みんな平等にする両方の組み合わせを、その時々で変えながら試合をするのです。
さらにいえば、リーグ戦でも、ひとつのクラブから出場する2チームが、選手が試合ごとに行き来できるようなレギュレーションにするといいと思います。つまり、2チームをまぜてしまってもいいことにする。各チームのコーチも、両方の選手を一緒にみていくことができます。
Aチームの子はよく知っているけど、Bの子は試合でのプレーを見ていないからわからないといったことがなくなります。
先日、東京都大田区で「池上カップ」を開催しました。この大田区では、コーチたちが話し合って「見守リーグ」を行っています。コーチたちが指示命令しない、見守るリーグです。
他の地域でも、このようなやり方で大会を実施する人が増えています。このこと自体は大変いいことではありますが、草の根をもっと広げて日本全体を変える動きにしなくてはいけないと考えます。
一方で、日本サッカー協会は、4種の登録チーム数が減少していることに注目しています。
例えば、登録しないチームはこう考えています。
全国少年サッカー大会を目指すと、勝利至上主義になりがちだ。だったら、協会には登録せずに自分たちで大会やリーグ戦を組んで子どもたちを育てていこう。
実際に、W杯の予選突破をするような国で、ジュニアの全国大会を開催している国は日本くらいしかありません。